シャープとの出資交渉が頓挫していた台湾の電子機器受託製造(EMS)最大手、鴻海グループが5月下旬、独自に研究所「フォックスコン日本技研」を大阪に設立して波紋を呼んでいる。同研究所の代表を務める、元シャープの液晶開発幹部の矢野耕三氏が本誌のインタビューに応じ、今の心境を語った。

シャープのトップエンジニアだった矢野代表が率いる「フォックスコン日本技研」。最先端技術の開発が目的でれ、すでに120億円の予算がついた

――シャープの液晶技術に魅せられて出資契約をしていた鴻海グループが、今回、元シャープのトップエンジニアである矢野さんをヘッドに据えて研究所をつくりました。

 鴻海グループは5月23日、以前から大阪にあった営業拠点の一部のスペースを使って、ディスプレーを研究するための「フォックスコン日本技研」を新たに立ち上げました。私はその代表です。

 組織上は鴻海精密工業の100%子会社で、本社で液晶パネルやタッチパネルなど視野についての事業を管轄するEBBG(アイ・ボール・ビジネス・グループ)と頻繁にやり取りをしています。

 目的は、スマートフォンなどに使われる高精細なディスプレーの技術を育てることです。有機ELや「IGZO(イグゾー)」といった酸化物半導体をはじめ、最先端の開発を進めていきたいと思っています。郭台銘(テリー・ゴウ)会長から、予算として120億円がつけられ、日本人技術者の採用面接を始めています。

 郭さんは「新卒も採用したい」と思っているのでしょうが、実際は、大学教授の推薦などをとりつけるなどの段階には至っていません。これから3年間、徐々に人を集めて、最大40人くらいのチームにする予定です。また堺市にある液晶パネル工場の「堺ディスプレイプロダクト」(鴻海とシャープの合弁会社)の中の設備を一部借りて、試作や開発も進めるつもりです。

――昨年3月に発表された、シャープ本体への出資(1株550円で9.9%)は“幻”になってしまったのでしょうか。

 実は、郭さんはシャープとうまくやっていきたい、と今でも思っています。