まして相手はブラジルです。ビニシウスやマルティネッリといったワールドクラスのアタッカーが前線に顔をそろえているのです。すべてのポジションを1対1にするのは得策ではありません。

 そこで日本はDFラインのカバー役をつくるために、ボールから遠いウイングバックはマンマークさせず、中間的なポジションを取らせたのです。そこにいれば緊急時にすぐにDFラインに戻れます。

 W杯出場国の中で、日本のマンツーマン・ハイプレスの完成度はトップクラスだと思います。

終盤の切り札となる
「高さとパワー」の戦術

 こうやって基本布陣となる攻撃的3-4-2-1の完成度を高めながら、同時に森保監督は他のオプションも増やしています。それが次に紹介する攻撃的3-1-4-2です。

 これはFWの人数を増やして2トップにする「高さとパワー重視」のシステムです(図38参照)。

図38 森保ジャパン(2026年W杯予選)同書より転載 拡大画像表示

 ラスト10分、相手にリードを許し、何としても得点がほしい状況だとしましょう。相手はローブロックを築き、ペナルティエリアに侵入するのは簡単ではありません。

 そんな状況を打開する手段のひとつが「高さとパワー」なのです。

 前線に高さとパワーのあるFWが2人並べば、クロスの成功率が高まります。ロングボールを入れ、こぼれ球からシュートする確率も上がるでしょう。

 現代サッカーには「コントロールド・カオス」という概念があります。

 クロスやロングボールを使って、意図的に混乱状態を引き起こし、シュートチャンスをつくるという考え方です。

 偶然に頼る部分があるので、ある意味、この攻撃は「ガチャ」を回すようなものです。ただし、闇雲に「ガチャ」を回すわけではありません。高さとパワーのある2トップを配置し、成功確率を高めたうえで回すのです。

 さまざまな状況に対応するには、パワープレーのカードも持っておいた方が安心です。

 2026年3月のスコットランド戦は、まさにこのシステムが勝利をもたらしました。

 後半33分、ピッチに入った塩貝健人選手が上田綺世選手と2トップを組み、日本はシステムを3-2-4-1から3-1-4-2に切り替えました。

 この試合がデビューとなった塩貝選手は身長180センチで高さはそこまでありませんが、爆発的なスピードとパワーが武器です。上田選手の周りを走り回って、相手の守備をかき乱しました。

 そして後半39分、三笘薫選手との連係からペナルティエリアに侵入した鈴木淳之介選手が左足でクロス。走り込んだ塩貝選手がボールを落とし、伊東純也選手がゴールを決めました。

 森保ジャパンにとって、3-1-4-2はゴールがほしいときの秘密兵器です。