高市政権発足後の長期金利の最高値

長期金利が上昇傾向にある。2026年5月18日には一時2.8%と、約29年半ぶりの高水準を付けた。高市政権の発足から5月末までの上昇幅は約1.0%ポイントに達した。上昇ペースの速さに加え、その内訳も注目される。
長期金利は、金融政策の見通しを反映する「リスク中立金利」と、財政悪化などに伴う国債保有リスクを示す「タームプレミアム」に分解できる。政権発足後は、リスク中立金利による押し上げはわずかにとどまる一方、タームプレミアムが大きく上昇している点が特徴だ。
背景の一つは、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」だ。将来の国債増発への警戒を市場が強めたことが、タームプレミアムの拡大につながったとみられる。
また、高インフレへの警戒が広がる中で積極財政の確度が高まれば、本来は日本銀行が利上げを通じてインフレ抑制を図るとの見方が強まり、リスク中立金利を押し上げる要因となるはずだ。
だが、日銀が大幅な利上げには踏み切りにくいとの見方が市場で広がったことで、その上昇幅は小幅にとどまっている。こうした見方の下で円安が進み、期待インフレ率が上昇した。これも、タームプレミアムの拡大を通じて、長期金利を押し上げる一因となったとみられる。
今後、政策金利が1.00%へ引き上げられたとしても実質金利はマイナス圏にとどまり、緩和的な金融環境は維持される見込みだ。円安の進行がインフレ期待を押し上げ、長期金利のさらなる上昇につながるリスクには当面、警戒が必要となる。
財政政策面では、プライマリーバランス(PB)を複数年で管理する案が示されており、積極財政スタンスは当面続く公算が大きい。以上を踏まえると、長期金利には一段の上昇余地がある。
政府は6月に補正予算を編成した。年間の市中発行額は増やさないものの、その財源は赤字国債で賄われる。さらに、飲食料品に対する消費税率の引き下げも検討している。PBを複数年で管理する方針の下で、こうした政策の財源も赤字国債に頼るのであれば、政府は将来、その分をPB黒字で埋め合わせる必要がある。
だが将来時点でそうした対応を怠るとの懸念が市場で広がれば、タームプレミアムはさらに拡大しかねない。積極財政の長期化によって財政の持続可能性への信認が損なわれ、長期金利が一段と上昇するリスクには警戒が必要だ。
(国際通貨研究所 上席研究員 久後翔太郎)







