日銀・植田総裁も言及「長期金利上昇」市場からの警告、10年先まで期待インフレ率2%超えの意味Photo:PIXTA

6月の日銀金融政策決定会合を前に、植田総裁は物価上振れと長期金利上昇への警戒を強めた。注目すべきは、期待インフレ率を示す10年債BEI(ブレークイーブン・インフレ率)が2%を上回っている点だ。市場は本当に10年先まで2%超のインフレを織り込んでいるのか。物価連動国債市場が発するメッセージを読み解く。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

ビハインド・ザ・カーブによる
長期金利上昇に言及した植田日銀総裁

 6月の日本銀行金融政策決定会合における利上げの可否について、注目が集まるなか、6月3日の植田日銀総裁のきさらぎ会における講演では「今回の供給ショックが景気に及ぼす影響や、原油価格上昇が他の財・サービス、ひいては基調的な物価上昇率に及ぼす影響などを踏まえ、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検していくことになります」としながらも、総じて物価上昇リスクに重点を置いた内容となった。

 興味深いのは日本国債(JGB)市場における期待インフレ率を示す10年債のBEI(ブレークイーブン・インフレ率)が2%を上回っていることを指摘した点だ。

 BEIは市場におけるインフレ期待を表す数字とされるが、植田総裁は「最近の長期金利の上昇の背景には、市場のインフレ予想の上振れが寄与しているとみられるため、適切な金融政策運営によって、インフレが適切にコントロールされていくという市場の信認を確保することが重要です」としている。

「物価の上昇に対して適切な対応が行われない可能性があると市場が認識した場合には、それを反映して長期金利が上振れる可能性があります」と、ビハインド・ザ・カーブのリスクについても明確に言及しており、足元の状況下で利上げを躊躇することは不可能であるとの姿勢を明確化したものとも受け止められた。

 次ページでは10年債BEIについて説明するとともに、最近の長期金利上昇が何を意味するのかを検証する。