『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている『ケーキの切れない非行少年たち』(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第22話『意見書』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。
「少年院送致」と「保護観察」、どっちが子どものためになる?
不登校だった境界知能の女子高校生、小平恵(仮名)は、不良グループと関わるようになり、初めて「自分の居場所」を見つけます。
これまで「友だちができたことがなかった」という恵にとって、不良グループの一員として受け入れられたことは大きな喜びでした。仲間に認められたことで次第に自信もつき、やがて精神科医・六麦克彦の外来にも来なくなってしまいます。
著者が勤務していた少年院でも、初めてできた「友だち」が実は悪友だったという少年は少なくありませんでした。
しかし半年後、恵の母親から六麦に連絡が入ります。恵が少年鑑別所に入っているというのです。
母親の話によると、恵は不良グループと行動を共にする中で、窃盗や恐喝、暴力行為などを繰り返し、警察に逮捕されていました。そのため、家庭裁判所で、社会の中で生活しながら更生を目指す「保護観察」となるのか、それとも「少年院送致」となるのかが判断される段階にあるとのことでした。
母親は、何としても少年院送致を避けたいと考え、保護観察になるよう六麦に意見書を書いてほしいと依頼してきました。
実際、子どもが少年院送致にならないよう弁護士をつける保護者も少なくありません。そして保護観察で済んだことを喜ぶケースもあります。しかし、それが本当に本人のためになるのか、疑問に感じることもあります。
保護観察となり、社会の中で更生し真面目に生活していけるのであれば問題はありません。しかし中には、問題を先送りにするだけで終わってしまうケースもあります。表面上は反省しているように見せることもでき、保護観察中に重大犯罪を起こし更なる被害者をつくる少年もいます。
少年院は刑罰ではなく保護処分であり、前科がつくわけではありません。むしろ、少年が自分自身と向き合い、しっかりと教育を受ける最後の機会ともいえます。
少年院では非行の反省だけでなく、勉学やコミュニケーション能力、就労のための技能、日常生活のスキルなど、さまざまなことを学びます。保護観察では得られない成長の機会があるのも事実です。この点は、弁護士の方々にもぜひ理解していただきたいところです。
恵は最終的に保護観察となり、六麦の外来にも再び通うようになります。元の高校生活に戻り、高校卒業後は大学へ進学します。診察の最後に恵は、「大学で生まれ変わって、好きなことをやってみたい」と六麦に話しました。
こうして診察は終わりましたが、6年後、恵は乳児殺害事件を起こしてしまうのでした。
原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社







