物をよく壊す、ハサミ使えない、左右が分からない…「不器用すぎる少年」が抱えていた障害【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第17話『不器用な太田太志』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

ハサミがうまく使えない…不器用な少年の抱える障害

 認知機能に弱さのある「ケーキの切れない非行少年たち」には、身体的な不器用さがみられることも少なくありません。この不器用さは、運動やスポーツが苦手であることにとどまらず、手先や身体を思うように使えないことから、自尊感情の低下や周囲からのいじめにつながることもあります。

 また、身体を使う仕事や作業においては、不器用さそのものが大きな障壁となり、社会生活を困難にしてしまう場合もあります。

 実際に少年院に入る前、アルバイトや仕事を一生懸命に続けようとしていた少年もいます。しかし、手先が不器用で作業がうまくできない、仕事の手順を覚えられないといった理由から、何度も解雇されたり、力加減が分からず、本人にそのつもりがなくても他人にけがをさせてしまい、結果として傷害事件に発展してしまったケースも見受けられました。

 多くの少年は、出院後に建設現場などの肉体労働に就くことが多いため、社会復帰を考える際には、非行の反省や被害者の気持ちを考えたりする心理・社会的な支援だけでなく、身体面への支援も欠かせません。

 このような身体的な不器用さは、医学的には発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder、以下DCD)といった疾患概念があり、小学生で約5~8%いるとされ、発達障害の1つでもあります。

 具体的には、ボタンが掛けられない、ハサミがうまく使えない、楽器がうまく弾けない、書字が下手、物によくぶつかる、物をよく壊す、力加減ができない、左右が分からない、ボールを上手く投げられない、姿勢が悪い、じっと座っていられない、といった特徴がみられます。これらは子どもの自立にも大きく影響しますので学校教育においても重要な課題ですが、DCD自体がまだほとんど認知されていないのが現状です。

 バイクの暴走行為で事故を起こし、通行人にケガを負わせた太田太志(仮名)少年もDCDと診断されていました。暴走といっても実際は不器用なためにハンドル操作を誤ったのです。

 さっそく少年院でも歩行中にふらつき他の少年にぶつかる、食事中にみそ汁をひっくり返して前の少年にかける、水道栓をきつく締めすぎて壊してしまう、といった行動がみられました。また歯も上手く磨けないため虫歯だらけです。少年院の多くの少年たちも虫歯を患っていて、月に1度だけ来てくれる歯科医の受診はいつも大人数でした。

 さらに境界知能や自閉スペクトラム症などとDCDの併存率はかなり高くなると言われており、少年院にはDCDが疑われる非行少年も大勢いました。こういった少年たちに対して、どのような支援が有効なのかについては、次回以降で紹介していきます。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社