『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第19話『遠くを見る』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。
身体的な不器用さからバイクのハンドル操作を誤り、暴走事故を起こしてしまった太田太志(仮名)は、少年院で不器用さを改善するためのトレーニングを継続して受けています。
今回のマンガで紹介するのは、「認知作業トレーニング(Cognitive Occupational Training:COGOT)」の中にある「動きを変える」という課題の1つ、「色か絵か」というトレーニングです。
この課題は、身体を動かしながら視覚的・聴覚的な注意力を高めることを目的としています。少年たちの前にはプロジェクターで映されたスライドが提示されています。
まず、色と動きを結びつけて覚えます。スクリーンに「赤」「黄色」「青」を順番に映し、「赤は止まる」「黄色は走る」「青は歩く」とルールを確認し、実際に体を動かして練習します。
次に、絵と動きを結びつけます。「牛」「犬」「ウサギ」「木」の絵を示し、「牛は歩く」「犬は走る」「ウサギは跳ねる」「木は止まる」と覚え、同じように練習します。
色と絵、それぞれのルールを覚えたら本番です。色のついた枠の中に動物や木の絵が表示されます。先生が「絵」と言えば絵のルールに従い、「色」と言えば色のルールに従って動きます。
指示がない場合は、直前の指示を続けます。先生は途中で何度も「絵」「色」と切り替えるため、少年たちは前のルールに引きずられないよう集中しなければなりません。慣れてくると、スライドの切り替え速度も速くなります。
一見単純に見えますが、複数の情報を同時に処理しながら体を動かす必要があり、注意力と判断力が求められる課題です。
ほかにも、指先の細かな動きを改善するため、爪楊枝を制限時間内に、井形に高く積み上げる練習や、体幹を鍛えるためのV字姿勢の保持などが紹介されています。これらのトレーニングは、週1回80分、計10回実施されます。
効果を確認するため、トレーニング前後に「四つ這いの自画像」を描いてもらうこともあります。開始前には、胴体から手足が不自然に伸びた“クモのような絵”を描いていた少年が、終了後には手足が正しい位置から出た身体の絵を描けるようになりました。太志もこのプログラムを通して、物の安全な運び方や体の使い方を身につけ、出院後の就労先では現場主任から評価されるまでに成長しました。
発達性協調運動症(DCD)はまだ広く知られていませんが、少年院教育の中で生まれたCOGOTのような取り組みは、学校現場でも参考になる可能性があります。
身体の使い方と認知機能の両方に働きかける支援は、子どもたちの将来のつまずきを防ぐ一助になると考えられます。なお、COGOTは「不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング」(三輪書店)として市販されています。
原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社







