稲盛和夫Photo:SANKEI

「そんな士気はニセモノや!」――。新入社員がよかれと思って行った仕事を報告した際、稲盛和夫氏から返ってきた言葉は予想外のものだった。

創業8年目の京セラに入社し、長年間近で稲盛氏の経営手腕を見てきた筆者には、入社間もない頃、稲盛氏から烈火のごとく叱られた苦い経験がある。今振り返ると、その時かけられた言葉のウラには、「リーダーとして大切な考え方」が隠れていたことがわかる。(NTMC代表取締役社長 森田直行)

「会社のためになる」と
信じてやったことだったが……

 私は1967年に京セラへ入社し、生産管理部に配属された。

 当時の京セラは創業8年目。社員数はまだ500人程度だった。

 新入社員の私に与えられた仕事は、納品書の作成や売上台帳の記帳、返品処理などである。希望していた部署ではあったが、実際は毎日そろばんを叩き、伝票を書き、数字と格闘する日々だった。

 そんな中で担当することになったのが、返品処理である。

 営業部門から返品された製品を受け取り、製造部門へ引き渡し、帳簿へ反映させる。一見単純な仕事だが、実際には営業と製造の利害がぶつかる厄介な業務だった。

 営業は返品を認めてほしいと主張し、一方の製造は簡単には認めたくない。

 私は双方の言い分を聞いて相手に伝える、いわば「伝書バト」のような役割だった。

 そんなある日、製造部門の責任者からこう頼まれた。