何度死のうと思ったか…非行少年の親が救われた瞬間【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている『ケーキの切れない非行少年たち』(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第26話『認める』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

「非行少年の親」たちの体験談

 万引きを何度も繰り返したことで少年院に入院している手塚陽翔(仮名)。その母である手塚真理恵(仮名)は、少年院で開かれる保護者会に参加することになります。

 この会には、同じように子どもが少年院に入った経験を持ちながら、現在は子どもが立ち直っている保護者OBも参加しており、自分たちの体験を語ってくれます。

 本話では、少年院で行われている保護者会の様子の一部が紹介されています。

 保護者会の開催方法は少年院によって多少異なりますが、一般的には入院直後の時期、中間の時期、そして出院準備の時期に行われることが多いようです。ただし、参加は義務ではありません。

 そのため、施設が遠く交通費の負担が大きい、仕事を休みにくい、そもそも参加に抵抗がある、保護者と連絡が取れないといった理由から、参加率が半数に満たないこともあります。

 また、参加したとしても少年院への不信感から、職員に不満をぶつけるなど、必ずしも前向きな姿勢とは限らない場合もあります。

 さらに、子どもが少年院に入っていても、一度も面会に来ない、連絡がまったく取れない、あるいは失踪してしまっている保護者もいます。そのため、保護者会に足を運んでくれるだけでも、実際にはありがたいことなのです。

 本話では、保護者OBが自分の体験を語ることで、同じ立場にある保護者同士が共感し合える場が作られています。

 非行少年の保護者は、社会の中で「育て方が悪い」と責められ、警察では叱責され、家庭裁判所では諭され、何度も頭を下げ続けてきました。そうした状況にある保護者に対して、少年院の教官が指導や助言を重ねると 、かえって心を閉ざしてしまうこともあります。

 だからこそ 、かつて同じ経験をした保護者OBの話を聞く機会が設けられているのです。

 ある保護者OBは、 自分なりに精いっぱい子育てをしてきたにもかかわらず、子どもが次第に非行に走り、何度も警察に呼ばれ、近所の目が気になって外に出られなくなったこと、そして「何度死のうと思ったか分からない」と感じるほど追い詰められていたことを語ります。

 他の保護者OBも同じような経験をしていました。真理恵もその話に深く共感します。そして、その話の中から、子育てについてのある大切なヒントを見つけていくのです。

 子育てには「これが正解」という答えはなかなかありません。しかし、一人で抱え込まず、同じ経験をした人や支援者とつながることが、新たな一歩につながることもあります。本話が、今まさに悩みながら子どもと向き合っている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院で勤務した経験があります。この作品は、その経験をもとに執筆した『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)のコミカライズ版です。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社