「仕事も家庭も中途半端な気がする」「毎日頑張っているのに、なぜか疲れが抜けない」。そんな悩みを抱える子育て世代は少なくない。小さな子どもを育てながら働く親は、睡眠不足や突発対応によって、朝から使える体力そのものが不足しやすい状態にある。さらに、終わらなかった仕事への気がかりが、休息時間まで侵食し、回復を妨げている。米国内科専門医・米国肥満医学専門医である著者が、医学的根拠に基づいて執筆した『体力がすべて』。いまある体力を、どのように伸ばし、配分するのかを説いた本書から、一部を抜粋・編集し、子育て世代が意識したい習慣を解説する。
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子育てと仕事を両立するための「体力」
小学生と保育園児の2人を育てながら、フルタイムで働いています。
毎日、朝の支度から保育園への送迎だけで、一仕事終えたような疲労感があります。日中も、子どもの急な発熱などで保育園から呼び出され、仕事を途中で切り上げて迎えに行くこともしばしばあります。
常にやり残した仕事が頭の片隅に引っかかっているのに、帰宅後は休む間もなく家事や寝かしつけに追われます。
休日も、子どもの習い事や遊びの相手で1日が終わってしまい、自分のペースで休めません。そのため、慢性的な睡眠不足で、疲労もなかなか抜けません。
仕事もプライベートも常に何かに追われて時間が足りず、どちらもちゃんとまわせている感覚がないまま、焦りと疲れだけが溜まっています。
【ここがポイント】体力不足の原因は、睡眠不足、体力不足、気がかりの負担
育児と仕事の両立で負担になりやすいのは、単なる忙しさだけではない。子育て中の親は、睡眠時間が短くなりやすく、日中の眠気も出やすい。そのため、朝の時点ですでに、その日に使える実効体力のベースが低くなっている日が続きやすい(*1)。
そこに、子どもの体調不良や予定外の対応が重なると、仕事は中断されやすく、終わらなかった作業が勤務時間外にも頭に残りやすくなる。こうした「仕事の気がかり」は、休む時間にも頭から離れにくくなり、心身の回復を妨げやすい(*2)。
さらに子育て期は、勤務時間外を十分に休息へとまわしにくい。小さな子どもを育てながら働く親では、くつろぐ時間の不足が、ストレスの高さや心身の不調と関連していることも報告されている(*3)。
このケースは、睡眠と回復が不十分なまま1日が始まり、そこへ予定外の対応と終わっていない仕事への気がかりが重なって、余力がさらに削られていく状態と捉えるとわかりやすい。
疲れ切らないための処方箋
この働き方で大切なのは、まず日々の余力が削られにくい形をつくることだ。仕事の気がかりを抱え込みすぎず、日中に短い休憩を挟み、睡眠のリズムを大きく崩さないようにする。その上で、送迎や家事といった日々の動きも、体力の土台を保つ時間として活用したい。
①気がかりを頭の外に出す
仕事と育児が入り混じる日常では、中断そのものを避けるのは難しい。負担になりやすいのは、中断のたびにやりかけの仕事が頭に残り続けることだ。
保育園からの急な呼び出しなどで仕事を中断せざるを得ないときには、次にやることを1行だけでも書き残しておきたい。
たとえば、「A社への返信文を整える」「会議メモから明日までにやることを3つ抜き出す」といった短い一文でよい。そうしておくだけでも、戻ったときに仕事へ入り直しやすくなる。
終わっていない仕事は、メモやタスク管理ツールに移し、頭の中だけで抱え込まないようにする。気がかりを頭の外に出しておくことが、その日に使える余力を守り、仕事を夜まで引きずりにくくする。
②短い休憩を日中に差し込む
まとまった休憩を取りにくい環境ほど、日中に休憩を意識して挟むことが大切になる。
仕事の切れ目や送迎に向かう前、あるいは帰宅して次の用事に取りかかる前など、数分でもかまわない。深呼吸をする、目線を遠くへ向ける、肩の力を抜く。そうした短い区切りだけでも、緊張が続きすぎるのを防ぎやすい。
こうした短い休憩は、その場で疲れを取りきるというより、余力の減り方を緩やかにし、1日の後半まで崩れにくくするためのものと考えたい。
③睡眠のリズムを崩しすぎない
このケースでは、十分な睡眠時間を確保しにくい日もある。そのため、まず意識したいのは、睡眠時間をただ増やそうとすることよりも、睡眠のリズムを大きく乱さないことだ。
平日も休日も起床時刻をできるだけそろえ、起きたら15~30分ほど光を浴びる。それだけでも体内時計は整いやすくなり、翌朝の動き出しもスムーズになる。
夜に家事や仕事が長引くほど、寝る時刻も遅くなりやすく、翌日の体力は落ちやすい。睡眠時間を十分に取りにくいときほど、まずは起きる時刻を大きく動かさないことを優先し、寝る時刻の乱れもできるだけ広げないようにしたい。
睡眠は、体力の回復だけでなく、感情の安定や集中の保ちやすさにも関わる。毎日7~9時間ほど眠れるのが望ましいが、それが難しい時期は、まずは睡眠のリズムを崩しすぎないようにするとよい。
④送迎や移動を「ゾーン2」の時間に変える
体力の土台を育てる上で鍵となるのが、中強度の有酸素運動、いわゆるゾーン2である。まとまった運動の時間を取りにくいときほど、送迎や移動での歩行も、体力づくりの時間として活かしたい。
たとえば、保育園の送り迎えや通勤の歩行を、「息は少し弾むが、会話はできる」くらいの速さにしてみる。10~15分ほどでも、積み重ねれば体力づくりにつながる。こうした短い中強度の歩行を重ねていくことで、同じ仕事量や家事の量でも消耗しにくい体が、少しずつ育っていく。
⑤家事の中に小さな筋力トレーニングとストレッチを入れる
筋力トレーニングの目的は、重いものをもち上げることだけではない。立つ、座る、抱える、押すといった日常の動きを、無理なく続けられる体を保つ上でも意味がある。
たとえば、洗面所やキッチンで短くスクワットをする。床から立ち上がるときに少しゆっくり動く。寝る前に胸や股関節まわりを軽く伸ばす。そうした短い負荷やストレッチを日常の中に入れるだけでも、体のこわばりや不調が生じにくくなる。
まとまった運動の時間が取れなくても、日常動作の中で体を使う時間は増やしていける。そうした積み重ねが、疲れにくく崩れにくい体につながり、短い休息や一晩の睡眠でもコンディションが戻りやすい状態をつくっていく。
(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)
1. Hagen EW, Mirer AG, Palta M, Peppard PE. The sleep-time cost of parenting: sleep duration and sleepiness among employed parents in the Wisconsin Sleep Cohort Study. Am J Epidemiol. 2013 Mar 1;177(5):394-401.
2. Wendsche J, Weigelt O, Syrek CJ. Unfinished work tasks and work-related thoughts during off-job time: meta-analysis of the Zeigarnik effect in a work-recovery context. Anxiety Stress Coping. 2026 Jan 19;1-23.
3. Håkansson C, Axmon A, Eek F. Insufficient time for leisure and perceived health and stress in working parents with small children. Work. 2016 Oct 17;55(2):453-61.






