ちょっと暑く感じるオフィスでは、なぜか頭がぼんやりする。タイピングが遅くなる。いつもなら気づくミスを見落としてしまう――。その原因は、職場の「暑さ」や「湿度」にあるかもしれない。仕事のパフォーマンスを守るために、夏のオフィスで何を整えればいいのか。1万人以上の患者を診てきた医師が、医学的根拠に基づいて執筆した『体力がすべて』。いまある体力を、どのように伸ばし、配分するのかを説いた本書から、一部を抜粋・編集し、暑い日の職場環境の整え方を解説する。

【暑い夏の仕事術】オフィスで作業効率を下げにくくする、環境の整え方Photo: Adobe Stock

仕事のパフォーマンスを下げる暑さとの付き合い方

 夏の蒸し暑さ、空気のこもった会議室、絶え間ない話し声、まぶしい照明。

 私たちの思考や判断は、こうした環境の影響を常に受けている。環境が整っていないと、どれだけ集中しようとしても、頭の働きは鈍りやすく、エネルギーの消耗も増えやすい。一方で、それらを少し整えるだけでも、頭の働きは安定しやすくなる。

 自分の周りの「環境の負荷」を考える上で大切なのは、どのような環境の変化が頭の働きを妨げるのか、そしてその影響を減らすには現場で何を変えればよいのかを、あわせて考えることだ。

体感の暑さは温度と湿度に左右される

 室温が高い環境では、タイピングが遅くなったり、誤字や見落としが増えたりしやすい。これは単なる感覚の問題ではなく、室温と作業成績の関連は、研究でも示されている。

 一般的なオフィス環境を対象とした研究では、おおむね25℃以上のやや高い室温では、作業成績が悪化しやすいことが示されている。特に反応時間などの指標で悪影響が現れやすい。一方で、21℃未満のやや低い室温では、明確な悪影響は確認されなかった。

 したがって、オフィスの温度管理では、暑くしすぎないことが、作業パフォーマンスの観点から重要になる(*1)。

 また、熱波の時期に冷房のない環境で過ごしていた学生は、空調のある環境にいた学生と比べて、認知テストで反応速度が遅く、正答率も低かったいう観察結果も報告されている(*2)。

湿度が高いと体感温度も上がる

 私たちが感じる暑さや寒さは、温度計の数値だけで決まるものではない。湿度が高いほど汗が蒸発しにくくなり、体の熱が逃げにくくなるため、暑さが強く感じられやすい。暑い環境では、湿度が高いほど認知パフォーマンスが低下しうることも報告されている(*3)。

 一方で、乾燥しすぎる環境では、目や喉などの不快症状が増えやすく、オフィスでもこうした症状の増加や生産性への悪影響が示唆されている(*4)。

 体感が極端になるほど、集中力は削がれやすい。感覚だけに頼らず、次の数値を目安に環境を管理すると、コンディションを安定させられる。

温度の目安:一般的なオフィス作業では、21~24℃が過ごしやすい範囲だ。25℃以上では作業成績が落ちやすいという報告もあるため、可能なら24~25℃を上限の目安に調整する

湿度の目安:健康と快適性のバランスから、室内の湿度は40~60%が望ましいとされる(
*5)。湿度が高い日、たとえば60%を超えて不快感が強いときは、除湿機やエアコンのドライ運転を活用する

体感温度を下げる方法

 同じ温度でも、工夫次第で体にかかる負担は軽くできる。

風を使う微風で室内の空気を循環させるだけでも、涼しく感じやすくなり、暑さによる負荷を下げやすい

日差しを遮る:窓からの直射日光は体感温度を押し上げやすい。ブラインドなどを活用して、日差しを和らげる

 温度・湿度に加えて、風と日差しを整えるだけでも、集中や思考が安定する環境をつくりやすくなる。

(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)

[注釈]
1. Lin X, Guo C, Wargocki P, Tanabe SI, Tham KW, Lan L. The effects of temperature on work performance in the typical office environment: a meta-analysis of the current evidence. Build Environ. 2025 Feb 1;269:112488.
2. Cedeño Laurent JG, Williams A, Oulhote Y, Zanobetti A, Allen JG, Spengler JD. Reduced cognitive function during a heat wave among residents of non-air-conditioned buildings: an observational study of young adults in the summer of 2016. PLoS Med. 2018 Jul 10;15(7):e1002605.
3. Tian X, Fang Z, Liu W. Decreased humidity improves cognitive performance at extreme high indoor temperature. Indoor Air. 2021 May;31(3):608-27.
4. Wolkoff P. Indoor air humidity revisited: impact on acute symptoms, work productivity, and risk of influenza and COVID-19 infection. Int J Hyg Environ Health. 2024 Mar;256:114313.
5. Arundel AV, Sterling EM, Biggin JH, Sterling TD. Indirect health effects of relative humidity in indoor environments. Environ Health Perspect. 1986 Mar;65:351-61.