同じ作業を長く続けていると、「なぜかミスが増える」「返事が遅れる」「頭がぼんやりする」ことがある。心理学では、作業時間が長くなるほど注意力が落ちやすくなる現象が知られており、特に寝不足の日や、長時間のオンライン会議では、その疲れはさらに強まりやすい。では、集中力を保つために本当に必要なのは何なのか。米国内科専門医である著者が、医学的根拠に基づいて執筆した『体力がすべて』。いまある体力を、どのように伸ばし、配分するのかを説いた本書から、一部を抜粋・編集し、体力を削りにくくする働き方のコツを紹介する。

【やる気の問題ではない】長い会議で「ぼーっと」しないためのコツPhoto: Adobe Stock

体力がなくて、集中できない?

 同じ作業を続けていると、時間の経過とともにミスが増え、反応が遅くなり、頭がぼんやりしてくる。これは単なる飽きではなく、注意や覚醒を支える仕組みが疲弊することで生じる、ごく自然な変化である。

 心理学ではこれを「タイム・オン・タスク効果」と呼ぶ。単調な作業を続けるほど反応は遅くなり、ミスが増加することが実験でも確かめられている(*1)。つまり、同じ作業を長時間続けると、注意力や判断の精度は少しずつ低下しやすい。

 さらに、寝不足の日は、よく眠れた日に比べて注意力の低下が大きくなりやすい(*2・3)。つまり長時間の集中と寝不足の掛け合わせは、注意力を大きく崩しやすい組み合わせと言える。

 職場でも原理は同じだ。長い会議や資料作成では、時間が経つほど判断ミスが増えやすい。脳は、長時間にわたって同じ水準の集中を維持できるようにはなっていない。

 またオンライン会議は、対面よりも疲れやすくなることがある。画面越しでは、表情や視線、相づちといった細かなサインがつかみにくく、通信の遅れや、映る範囲の限界もある。そのため、相手の反応を読み取り、自分の反応を伝えるために、対面以上に気を配る場面が生じやすい。

 こうした背景には、非言語的な手がかりを読み取り、伝える負荷の増加が関わっていると考えられている(*4)。

 また、オンライン会議が長いほど疲労感が強まりやすく、集中の維持しにくさにもつながりやすいことが報告されている(*5)。

 大切なのは、集中を高めることだけではない。集中し続けなくて済む設計にすることだ。たとえば、1時間の会議を50分で切り上げる。長時間の作業には短い休憩を挟む。こうした小さな区切りが、集中を立て直すための大事な時間となる。

(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)

[注釈]
1. Satterfield BC, Wisor JP, Schmidt MA, Van Dongen HPA. Time-on-task effect during sleep deprivation in healthy young adults is modulated by dopamine transporter genotype. Sleep. 2017 Dec 1;40(12):zsx167.
2. Lim J, Dinges DF. Sleep deprivation and vigilant attention. Ann N Y Acad Sci. 2008 May;1129(1):305-22.
3. Lim J, Dinges DF. A meta-analysis of the impact of short-term sleep deprivation on cognitive variables. Psychol Bull. 2010 May;136(3):375-89.
4. Bailenson JN. Nonverbal overload: a theoretical argument for the causes of Zoom fatigue. Technol Mind Behav. 2021 Feb 23;2(1):1-6.
5. Fauville G, Luo M, Queiroz ACM, Bailenson JN, Hancock J. Zoom Exhaustion & Fatigue Scale. Comput Hum Behav Rep. 2021 Aug 1;4:100119.