「わざと」じゃないかも…非行少年の問題行動に隠れていた「あるサイン」【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている『ケーキの切れない非行少年たち』(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第29話『沈殿』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

教官の善意や厳しさが
そのまま伝わるとは限らない

 少年院で行われた事例検討会を軸に、軽度知的障害の疑いがある倉持少年(仮名)と、彼を指導する大森教官(仮名)の葛藤、そして現代の非行少年が抱える背景の複雑さが描かれています。

 倉持少年は面接で質問されてもすぐに答えられず、黙り込んでしまうことが多い少年でした。しかしそれは反抗や無視ではなく、頭の中でゆっくり考えている可能性もありました。

 また、幼いころから勉強や運動が苦手で、家庭では虐待を受けていたようで、叱られる経験ばかりで褒められる機会がほとんどなかったようです。そのため他人から注意されると「否定された」と感じやすく、被害的に受け取ってしまい、それが怒りや問題行動として現れることがあると推測されました。

 検討会では、こうした行動を単に「わざと」と決めつけるのではなく、少年からのサインとして捉える必要性が示されます。

 特に面接の時間は、少年にとって自分の気持ちを受け止めてもらえる重要な機会であり、それが不安定になると大人への信頼感が揺らぎ、行動にも影響します。実際に、大森教官が多忙のため面接を延期したことが、倉持少年の不安を強めていたことも明らかになってきました。

 指導する側の善意や厳しさが、必ずしもそのまま伝わるわけではなく、少年の特性に応じた関わり方が求められます。

 さらに検討会では、教官たちが倉持少年の立場に立ち、不安や「自分を分かってほしい」という思いを想像し、言葉にしていきます。

 この視点の変化をきっかけに、大森教官は少年の特性に合わせた関わり方を模索し始め、時間をかけながら二人の関係は少しずつ改善し、倉持少年の問題行動も減っていきます。

 近年、少年院に収容される少年の数は減少しています。こ の背景には社会的支援の広がりがあります。 その一方で、支援からこぼれ落ちた問題の深い少年が集まりやすくなっているとも指摘されています。

 非行少年の人数が減っているにもかかわらず、教官の負担感は軽くならない――この現象の原因は 、非行少年の性質が変わったのではなく、もともと存在していた問題がより顕在化しているに過ぎないという見方が作中で描かれているのです。

 六麦はこれをコップの底にたまる「沈殿物」に例え、現代の矯正教育が抱える課題を示しています。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社