暴行・暴言を繰り返していた非行少年→教官が気づけなかった「ある特徴」【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている『ケーキの切れない非行少年たち』(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第28話『事例検討会』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

「すぐキレる」「平気でウソをつく」…
精神科医が提示した「見立て」は?

 精神科医・六麦克彦が勤務する「要鹿乃原少年院」では、知的障害や発達障害を抱える非行少年たちに対する更生支援が行われています。本話では、17歳の少年・倉持颯真(仮名)の事例検討会を通して、非行少年の問題行動の背景と、それを指導する側の認識のズレが描かれています。

 倉持少年は、アルバイト先で店主に注意されたことに激昂し、暴行を加えた罪で収容されました。診断は「軽度知的障害の疑い」とされています。

 収容後も、教官の指導に従わない、他院生と口論になる、体育の時間に他院生の足を蹴るなど問題行動が続き、さらにテレビ視聴中に注意した大森教官(仮名)の胸ぐらをつかむという重大な規律違反を起こしていました。

 事例検討会では、担当の大森教官が「すぐキレる」「被害的に受け取りやすい」「平気で嘘をつく」と倉持少年の扱いにくさを強く訴えます。

 特に、少年院の体育で行ったサッカー中にボールと関係のない場面で他人の足を蹴った行為について、大森教官は「明らかにわざとだ」と判断し、本人が否定しても「嘘をつくな」と厳しく叱責していました。こうした指導の背景には、何度注意しても行動が改善しないことへの疲労感や無力感がありました。

 ここでコメンテーターとして参加した六麦はある視点を提示します。

 少年院には身体的に不器用な少年が多く、ボールをうまく蹴ることすら難しい者が少なくないという「一般的な特徴」を示したうえで、大森教官の「わざと」という判断の根拠を問います。

 教官が悪意や性格の問題と捉えていた行動が、実際には認知機能の弱さや身体的不器用さに起因している可能性を考えてもらったのです。

 認知機能に弱さがある場合、視覚や聴覚の情報処理がうまくいかず、相手の何気ない動きや言葉を攻撃と誤解してしまい、衝動的に怒りを爆発させることがあります。

 私自身も児童精神科医として医療少年院で勤務した中で、指示を正確に理解できないことで、意図しない行動をとり、その結果「嘘をついた」と誤解されることもたびたび見聞きしました。

 さらに身体的不器用さがあると、運動が苦手なだけでなく力加減の調整が難しく、本人に悪意がなくても他人に怪我をさせてしまうことがあります。

 こうした背景を理解せずに「わざとやっている」と決めつけて叱責すると、本人はなぜ怒られているのか理解できないまま不満や反発を強め、結果として更生から遠ざかってしまいます。

 非行という行動の背後にある「生きづらさ」を包括的に理解するとともに、支援する側にも知識の習得と視点の転換が求められます。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社