『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている『ケーキの切れない非行少年たち』(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第27話『恵まれない倉持颯真』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。
人数減でも、「指導しにくい非行少年」が増えている?
今回から、少年院で勤務する「法務教官」について紹介していきます。
法務教官とは法務省矯正局に所属する国家公務員で、全国に約3000人います。主な勤務先は少年院と少年鑑別所の2つですが、その多くは少年院に配置されています。毎年およそ200名が新たに採用されています。少年院における主な業務は、少年の生活指導や教育です。
なお、似た名称の職種に「法務(心理)技官」があります。こちらは主に少年鑑別所で、少年の心理評価(鑑別)を行い、処遇方針を決定する専門職で、人数は法務教官の約10分の1程度です。
本コミックに登場する精神科医の六麦克彦も、少年院では法務技官に該当しますが、心理技官と区別して「医系技官」とも呼ばれています。
少年院では毎朝、職員による朝礼会議が行われます。そこでは前夜の当直時間中に起きた出来事や当日の行事予定、全体への連絡事項などが共有されます。
物語では、倉持颯真 少年(仮名)が前夜に起こした問題行動が報告されました。倉持少年はテレビ視聴中、姿勢を正すよう促した大森教官(仮名)に対して突然激昂し、机を蹴り上げたうえ、胸ぐらをつかんで「うるせえ!」と怒鳴りました。
倉持は今月だけで3回のトラブルを起こしており、重大な規律違反として単独室に収容されることになります。
中堅にあたる大森教官は、「最近の非行少年たちは、やりにくくなった」と院長に語ります。
犯罪白書(令和7年版)によると、少年院の収容者数は過去30年間で平成12年の6052人をピークに減少し、令和4年には1332人と、昭和24年以降で最少となりました。その後は増加に転じ、令和6年には1828人まで増加しています。
こうした数字だけを見ると、少年の数が減った分、現場の負担も軽減しているように思われがちですが、実際にはそうではなく、むしろ指導の難しさが増していると言われています。
では、なぜ人数が減っているにもかかわらず、教官の負担感は軽くならないのでしょうか。
六麦はその理由を「非行少年の二極化」にあると説明します。つまり、比較的恵まれた家庭や社会環境で育った非行少年と、虐待や家庭環境の問題を経験した非行少年や、発達障害などの特性への適切な支援を受けられずに育った 非行少年との間で差が広がっているのです。
その結果、少年院に入ってくるのは問題の深いケースが多くなり、現場では「最近の少年は扱いにくい」と感じられるようになったというのです。大森教官のように熱心な指導者ほど、少年が変わらないことに責任を感じ、精神的に追い詰められてしまうこともあります。
非行少年の本質が変わったのではなく、社会構造の変化によって問題を抱える少年がより深刻な形で集まっている可能性も含め、少年非行を理解していく必要があります。
原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社







