優秀なマネージャーは、「少しだけ演技」する。あえて「演じること」を選べば、「部下に信頼される」「会社に評価される」「自分も疲れない」職場になる。
社労士として3000件を超える職場の悩みを解決してきた本田淳也氏は、「リーダーとしてのふるまい」を意識的に選ぶことが重要だと説く。本稿では、その考え方のなかから、「説明する力」について紹介する。

「部下が次々と辞める職場」のリーダーの特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

見通しがないと、判断できない

私が住む青森市では昨シーズン、例年の約2.5倍ともいわれる大雪に見舞われました。
生活道路にはなかなか除雪が入らず、車を出せなくなった私は、事務所まで1時間ほど歩いて通う日々が続きました。

当時、除雪状況の全体像が見えにくい期間が続きました。
多くの市民が感じていたのは、除雪がいつ入るのかと同じくらい、「今、何が起きていて、これからどうなるのか分からない」という見えない不安だったように思います。
先の見通しが見えないと、人は次に何をすべきか判断できなくなります。
この感覚は、職場でしばしば起きているコミュニケーションの問題とよく似ています。

説明がないと、人は最悪を想像する

職場で、「何が起きているのか説明がない」という声をよく耳にします。

人事異動の理由が分からない、新しい方針の背景が共有されない、評価の基準が曖昧なまま伝えられる。
こうした状況では、部下は情報の空白を自分なりの想像で埋めようとします。
そして多くの場合、その想像は楽観的なものではありません。
不安は、事実よりも「分からないこと」から生まれるのです。

完璧な答えより「途中経過の一言」

大雪の期間も同じでした。
完璧な除雪がすぐにできるわけではないことは、多くの人が理解しています。
それでも「今どういう状況で、次はどうなる見込みなのか」という説明が毎日あれば、感じ方は大きく変わったはずです。

これは企業の現場でも同じです。
でも、実際はリーダーがすべての答えを持っているわけではありません。
だからこそ途中経過でもいいので言葉にして伝えることが、チームの安心感につながっていきます。

もしこうした説明が希薄になってしまうと、部下はさまざまな憶測を巡らせるようになります。
そして、「この職場は大丈夫なのだろうか」「ここにいていいのだろうか」という不安や不信感につながっていきます。
人が辞める職場では、待遇や仕事内容だけでなく、「状況を言葉にして伝えること」が欠けているケースも少なくないのです。

上司の沈黙が、不安を広げてしまう

上司が沈黙すると、部下は「何か悪いことが起きているのではないか」と考え始めます。
逆に、「まだ決まっていないけれど、こういう方向で考えている」と一言添えるだけで、職場の空気は驚くほど変わります。

人は、困難そのものよりも「理由が見えない状態」に強いストレスを感じます。
だからこそ、リーダーには状況を言葉にする役割があります。

(本稿は、『3000件の職場の悩みを解決したプロが教える リーダーのふるまい大全』の発売を記念したオリジナル記事です)