部下のためを思って、自分の成功体験を語る。「俺がやってた頃はさ……」。よかれと思ったその一言で、なぜか部下の心は静かに離れていく。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏は、新刊『自分の言葉で話せるようになりましょう。』で、リーダーを「俺を見ろ」型と「お前を見ろ」型の2種類に分ける。部下がついてくるのは、後者だ。では、ついてくる上司は、何と言うのか。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局/淡路勇介)
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ついてこない上司の口グセ「俺がやってた頃は」
世の中には、2種類のリーダーがいます。
部下に「俺を見ろ」と言うリーダーと、「お前を見ろ」と言うリーダー。
「俺がやってた頃はさ……」は、前者の代表的な口グセです。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より
なぜ逆効果なのか。
「俺はこうやってきた」と語るのは、部下の意識を、上司である自分に向けさせる行為だからです。すると部下は、上司の顔色を窺い、上司が褒めそうな動き方を無意識に選ぶようになる。
『自分の言葉で話せるようになりましょう。』ではこれを、これを、部下が「消費される」とまで言います。
成果は出ても、部下は自分自身と向き合えないまま、年月だけが過ぎていく。
「で、結局どうなの?」も「こうすればいい」も、同じ
「俺を見ろ」は、自分の経験を語るときだけに出るわけではありません。
部下が言葉に詰まって、沈黙したとき。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より
沈黙は、部下が自分の言葉を探している時間です。
その時間を上司の言葉で埋めれば、部下は考えるのをやめ、上司が満足しそうな答えを当てにいく。
「それ、こうすればいいよ」と先に答えを渡すのも、同じです。一見親切に見えますが、部下が自分の頭で答えを出す機会を、先回りして奪っている。
片石氏の会社・yutoriでは、この「管理(マネジメント)」を禁止し、「相手の中にあるものを引き出す(プロデュース)」に切り替えたといいます。
では、どう言う?
答えは、たった一つの問いです。
「なんで、そう思ったんだろう?」
ミスをしても、責めない。指示も、正解も渡さない。代わりに、問いを投げる。その問いは、部下が自分の姿を映すための鏡になります。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より
「俺がやってた頃は」が部下の意識を上司に向けさせるのに対し、「なんで、そう思ったの?」は、部下の意識を、部下自身に向け直す。同じ一言でも、向きが正反対なのです。
結局のところ、いいリーダーは、人を動かそうとしません。
人を動かそうとするほど、人は動かなくなる。人を動かそうとするのではなく、相手が自分から動きたくなる問いを、隣にそっと置く。
「俺がやってた頃は」を飲み込んで、「最近、どう考えてる?」と聞けるかどうか。
その小さな差が、ついていきたい上司と、そうでない上司を分けるのです。
(本稿は、片石氏の著書『自分の言葉で話せるようになりましょう。』〈ダイヤモンド社〉をもとに構成したものです)









