高齢男性の「死亡・認知症」リスクは配偶者を亡くすと上昇、日本老年学的評価研究の調査よりPhoto:PIXTA

 日本老年学的評価研究(JAGES)は、日本の65歳以上の自立した高齢者を対象に行われている「健康とくらしの調査」だ。最新の報告によると配偶者を亡くした影響には性差があり、男性がより脆弱らしい。

 調査では、2013年の時点で既婚者だった約2万6000人について「死別なし」「2013~15年に死別」「2015~16年に死別」の3グループに分け、死別後の身体・認知機能、メンタルヘルスや主観的な幸福感、社会的なウェルビーイング、社会性が高い利他的な行動、健康行動、認知的ソーシャルキャピタル(地域を支え、支えられているという信頼関係や結びつきを指す)など7領域、合計37項目について、配偶者死別との関連を検討した。

 参加者の健康情報や要介護状態は、公的介護保険のデータと連携して最大6年間を追跡し、配偶者を失った影響の経時的な変化も見ている。

 参加者のうち、16年時点で配偶者を亡くしていた方は1076人だった。性別で影響を見ると、男性では死別経験者の死亡リスクが3~4年後におよそ1.9倍に上昇したほか、認知症リスクは4~6年後におよそ2.3倍に上昇。さらに要介護リスクも増加していた。

 一方、女性では死亡リスクへの影響はほとんど認められず、認知症や要介護リスクとの関連も弱かった。

 死別後1年以内の影響でも正反対の結果が出ている。男性は死別直後から抑うつ症状や幸福感の低下、絶望感が増加したのに対し、女性はむしろ、幸福感や生活満足度の上昇、生きがいが増すなど、前向きな影響が認められたのだ。このほか、女性は死別後に健康診断の受診率が上昇するのに対し、男性は飲酒量が増えるなど、健康行動にも性差が生じている。

 社会生活は男女とも友人との交流や趣味の時間が活発化した一方、男性でのみ社会的なサポートが減少した。配偶者任せにしてきた地域社会との交流が減るからだろう。配偶者を失った男性の“生きづらさ”を軽くするには、意識的にご近所付き合いや地域の活動へ巻き込む必要がありそうだ。

 20年の国勢調査では65歳以上の女性の36%、男性の10%が配偶者との死別を経験。75歳以上ではそれぞれ54%、15%に達する。決して他人事ではない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)