病気だったら、余命は知りたい?→看護婦の「意外な答え」が深すぎて、ぐうの音も出ない〈風、薫る第70回〉『風、薫る』第70回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第70回(2026年7月3日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

夫を手術させた妻の後悔

「一ノ瀬さんもつけるんだなあ…嘘」
「まだ少し意識が混乱してるみたいですね」

 手術をしたものの、がんが転移していることに薄々気づいてしまった山本(本田大輔)。でもりん(見上愛)は誤魔化すしかない。

 朝から、つらいドラマがはじまった。

 以前、『ゲゲゲの女房』の脚本家・山本むつみさんに取材したとき、朝ドラは病院で放送されているので、入院している人、通院している人、関係者のひとたちに気遣って脚本を書いていると聞いた。

 山本のエピソードが病院で放送された場合、どう受け止められるのだろう。

 ただ、6月30日(火)放送の『あさイチ』ではがん検診の話題もあった。特定の病気を題材に放送してはいけないということはないとは思う。

 山本のからだは衰弱しているが、口数は相変わらず多い。

 妻のテイ(伊勢佳世)がりんに「すみませんね。いちいちしち面倒くさくて」と言うと、「“しち”面倒くさいの“しち”ってなんだろうね」なんてことを言ってふざけている。

 ふざければふざけるほど痛々しい。そんな夫を見ながらテイは嘆く。

「こんなことなら、やっぱり無理して手術受けさせなければよかった。ほんとバカなことした」

 それでも無理して「あのほら吹きが、最後に私にだまされて腸炎だと思い込んで」と強気なことも言ってみる。そんなふうに言うしかないほど心が落ち着かない。なんとか現状を自分なりに納得できるものにしたいのだろう。

 感情をできるだけ乱さないように必死なテイ。とてもつらいと思う。伊勢佳世の演技から、表面上はからっとしながら心は濡れ雑巾を絞っているような妻の心情が伝わってくる。

 家に戻ったりんは、縁側でお茶をいただきながら直美(上坂樹里)と語らう。

 山本の話を発端に話の方向性は、りんと直美、互いの将来のことに発展していく。