会議で誰よりも早く正解を出す。資料を素早く仕上げる。かつて“デキる人”の代名詞だったその力が、いま静かに価値を失いつつある。1000社・3000名のビジネスパーソンの働き方の変化を追った話題の書『AIで終わる人 AIで化ける人』(中平健太・著、ダイヤモンド社)から、新しい評価軸を読み解く。

AIで終わる人Photo: Adobe Stock

その「速さ」、まだ武器になると思っていませんか

質問されれば、すぐに答えが浮かぶ。会議では真っ先に手が挙がる。
学生のころから「頭の回転が速い」と言われ、それを強みにしてきた――。
そんな自負を持つ方も、少なくないのではないでしょうか。

与えられた問いに、誰よりも速く、正確にたどり着く。
これまでの時代、その力は確かに高い評価につながってきました。

ところが、生成AIの登場で、状況は静かに、しかし決定的に変わりつつあります。
半日がかりで絞り出すような答えを、AIは数秒で、文句ひとつ言わずに差し出してくる。
過去の知識やデータから「正解」を導くという一点で、人がかなう場面は、もうほとんど残っていません。

問われているのは「答え」ではなく「問い」

では、これから何が武器になるのでしょうか。
鍵をにぎるのは、AIには立てられない「問い」を持てるかどうかです。

「そもそも、なぜこれを解くのか」
「本当に向かうべき先は、ここではないのではないか」

そんなふうに一歩引いて問えたとき、はじめてAIの計算力は意味を持ちはじめます。

その価値の逆転を、こんなふうに言い表した一節があります。

「良い解答」を持っている人が賢いとされた時代は、もう終わりました。
「解答」の価値がコモディティ化する中で、自分だけの「良質な問い」を武器として持ち続けること。
それこそが、AI時代を軽やかに生き抜くプロの条件となるでしょう。


――『AIで終わる人 AIで化ける人』より

出てくる答えの質は、投げかける問いの質でほぼ決まります。
「どう解くか」に飛びつく前に、「何を、なぜ解くのか」を見極める。
即答の速さを競う土俵から、一度そっと降りてみる。
そこにこそ、これから長く必要とされる人の姿があるのかもしれません。

(本記事は、書籍『AIで終わる人 AIで化ける人』を一部抜粋、編集したものです。)

中平健太(なかひら・けんた)
株式会社ガラパゴス 代表取締役社長
早稲田大学理工学部卒業後、プロセス改善コンサルティングファームを経て2009年に創業。100を超えるスマホアプリ開発などを行うなかでデザイン産業の課題に直面し、いち早くAI技術の研究開発をスタート。2019年にAIを活用したクリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」をリリース。同サービスはのべ1000社・3000名以上に導入され、企業の業務フローと、個人の思考や働き方に根本的な変革をもたらしている。「ICCサミット KYOTO 2022 カタパルト X」優勝など起業・スタートアップ関連の賞を多数受賞。テレビやウェブメディアでも広く取り上げられ、1万人超への講演実績も持つ。現在は累計約24億円の資金調達を実施し、AI技術の社会実装を牽引している。