資料構成の最初の案を作成しても、「この順番だとわかりにくい」とすぐに書き直しを指示。

 色使いやフォントに至るまで、「私のやり方のほうが確実だ」と細部にわたって修正を命令。

 Bさんが「こういう進め方はどうでしょうか?」と自主的な提案をしても、「それは非効率だ。とにかく私の言うとおりに進めてくれ」と却下し続けました。

 結果、Bさんは自分で考えることをやめ、「どうせ考えても部長に直される」と、A部長の指示を待ってからしか行動しない「指示待ち社員」になってしまいました。

 Bさんは失敗を恐れるようになり、プロジェクトへの意欲も低下しました。

 いかがでしょうか?なんでも指示する上司が、「指示待ち」の部下を生み出してしまう、最もわかりやすいケースです。

 こんなやり方では、Bさんが「新規プロジェクトの成功に向けて、どんな資料をつくるべきか?」といった自律的な思考を育むことはできません。

「自分はこの手のマイクロマネジメントはしない!」と言う人であっても、別のタイプの失敗をしていたりします。

目的が曖昧になると
チームは機能しない

 次の事例を見ましょう。

◎事例2 組織のミッション・目的があいまい

 Dさんは顧客からの問い合わせへの対応をC係長に相談しています。顧客対応にはリスクが伴うため、C係長は、万が一の失敗時の責任を取りたくないと内心、思っています。

 Dさんが「A案とB案、どちらで進めるべきでしょうか」と尋ねると、C係長は「うーん、どちらも一理あるね。君が良さそうだと思うほうで」と判断をDさんに丸投げします。

 Dさんが自分の判断で進めて失敗すると、C係長は「なぜ私に相談しなかったんだ。私はそうしろとは言っていない」と、責任をDさんに押し付けました。

 結果、Dさんは、自分の判断で行動することに強い恐怖を感じるようになりました。何をしても責任を問われる可能性があるため、C係長に「どうすればいいですか?」と具体的な指示を仰ぐことだけが安全だと学習し、「指示待ち」の姿勢が定着してしまいました。

 このケースでは、責任回避的なC係長の姿勢が良くないのは明らかですが、問題の本質は組織の「目的」と「目指すべき理想の状態」がはっきりしていないことにあります。

『米国海軍大学元教官が教える自律型チームのつくり方』書影米国海軍大学元教官が教える自律型チームのつくり方』(浅野 潔、フォレスト出版)

 C係長のような上司は困ったものですが、こうした上司自身、スタバにおけるミッションのようなはっきりした基準を与えられていないため、自信を持って決断ができない。C係長も、Dさんと同様、間違ったマネジメントで困っている「被害者」の1人でもあるのです。

 この会社は、目的の共有がないため、「目指す方向がバラバラな烏合の衆」になっていると言えるでしょう。

 産業構造の変化、人手不足、といった、ただでさえ厳しい環境に加え、コンプライアンスやワーク・ライフ・バランスといった難題もクリアしなければいけない現代のマネジメント。リーダー・マネジャーの苦労は本当に同情します。

 チームがうまく機能しないとき、「指示待ちの部下」ばかりが増えてしまうときには、自分のチームがここで述べたような問題を抱えていないか考えてみる必要があります。