「せっかくなら安心なものを選びたい」。そう思って、スーパーの棚で、「国産ワイン」や「無添加ワイン」と書かれたボトルを無意識にカゴに入れていないだろうか。知らずに買ってしまう人が多いラベル表示の「言葉の裏側」と、「ワイン」の正しい見分け方を解説する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「日本ワイン」「国産ワイン」「無添加ワイン」の決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock

「日本ワイン」と「国内製造ワイン」は別物

「日本ワイン」と聞いて、多くの人が「日本のぶどうから造ったワイン」を想像すると思います。

実は、日本産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒だけが「日本ワイン」と名乗れるようになったのは、2018年とつい最近のこと。

以前は、すべて「国産ワイン」という曖昧な名称に包まれていました。

現在の表示ルールでは、日本国内で製造されたワインを総称して「国内製造ワイン」と定義しています。

その中で、国産ぶどうを100%使用したものだけが「日本ワイン」と名乗れるよう、明確に区別されるようになりました。

つまり、「日本ワイン」以外の「国内製造ワイン」は、日本国内で醸造さえしていれば、原料はどこの国のものでも構いません。

多くはチリやスペインなどから濃縮果汁やバルクワインを輸入し、国内で製品化しています。

例えば、ワインの国内製造量ツートップの県をご存じでしょうか。

「山梨や長野じゃないの?」と思うかもしれませんが、実は栃木県神奈川県です。これは大手メーカーの巨大工場があるためです。

国内製造ワイン全体における「日本ワイン」のシェアは2割前後。実に8割近くが、海外原料を使用した「国内製造ワイン」なのです。

「酸化防止剤無添加」という
魔法の言葉の裏側

もう一つ、スーパーでよく見かける「酸化防止剤無添加ワイン」についても触れておきましょう。

「無添加=体に良い」という消費者のイメージを捉えて広く普及したのが、国産の「酸化防止剤無添加ワイン」というカテゴリーです。

人為的な介入を避けて造られるナチュラルワインとは似て非なる存在ですが、そもそも酸化防止剤は、ワインの劣化を防ぐ重要な役割を担っています。

「酸化防止剤無添加ワイン」の多くは、ワインを飲み慣れていない層に向けて甘くフルーティーに仕上げた後、高度なろ過技術や加熱殺菌などを駆使し、衛生管理を徹底した工場ラインを用いることで品質を安定させています。

だから「無添加」で販売できるのです。

海外原料を使ったワインや無添加ワインが、必ずしも低品質というわけではありません。

大切なのは、ラベルの「魔法の言葉」に踊らされず、裏側にある事実を知って、賢く選ぶ視点を持つことでしょう。

(本稿は書籍『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より一部を抜粋・編集したものです)

水上 彩(みずかみ・あや)

ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。