『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第75回では、いわゆる「ハゲタカファンド」について解説する。
イケイケ社長が電話口でピシャリ!
外資系ファンド・サンデーキャピタルが記者会見で今後も株式を保有していくことを表明し、新興上場アパレルメーカー・T-BOXの社内に激震が走った。そんな折、T-BOX創業者で代表の花岡拳のもとに、サンデーキャピタルの福沢ウイリアム太郎から直接電話がかかってくる。
「ついに来たか! 俗にいうハゲタカどもが!」と臨戦モードの花岡。
電話口でいきなり「あんたか…クソ野郎は…」とののしる花岡に対して、福沢も「企業経営者が礼儀をわきまえないとは感心しませんね」と言い返す。だが福沢は、あらためて花岡に面会を求める。それを受けて花岡は、こう言って一方的に電話を切るのだった。
「明日午後1時こっちに来い。以上」
翌日、T-BOX社内で顔を合わせた花岡と福沢。花岡はサンデーキャピタルの裏に一ツ橋商事がいると指摘。さらに、サンデーキャピタルは詰まるところ、金をもうけたいだけで人間の尊厳や誇り、魂さえも悪に売り渡した亡者だと糾弾する。
「ハゲタカファンド」は本当に悪なのか?
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
あらためて「ハゲタカファンド」とは、経営難に陥った企業や、割安になった資産を買い、再編し売却することで高い利益を得る投資ファンドを批判的に呼ぶ言葉だ。
日本でその名称が声高に叫ばれたのは、もう20年以上前、米リップルウッド・グループを中心とする投資家グループが旧・日本長期信用銀行(長銀)を買収したタイミングだ。
経営破綻して国有化された長銀は、2000年にリップルウッドらの投資ファンドへ譲渡された。ファンドは長銀株を10億円で取得し、さらに1200億円の増資を引き受け、新生銀行(現在のSBI新生銀行)として再出発させた。
その後、新生銀行が再上場すると、保有株の一部売却で巨額の利益を得た。旧長銀の破綻処理を巡って巨額の公的負担が生じる一方、外資系ファンドが大きくもうけたという構図から、「税金を利用して利益を得たハゲタカ」との批判を浴びた。
だが当時の政府は、複数の候補を比較したうえで、破綻処理に伴う費用などを総合的に考慮して譲渡先を選んだと説明している。その後の紆余曲折はさておき、少なくとも新生銀行も再上場を果たしている。ハゲタカファンドという批判も、立場を変えれば違う視点も出てくる。
現在では、これまでハゲタカ扱いされてきたプライベートエクイティ(PE)ファンドだけでなく、アクティビストファンドも注目を集めている。アクティビストファンドは経営権の取得を前提とするPEとは異なり、あくまで少数株主として企業に変革を迫り、投資利益を得ようとする投資家だ。
だがこの姿もまた、「ハゲタカ」として批判されることもある。ともかく、漫画では露悪的に描かれるハゲタカファンドも、現実には、企業再生と利益追求の境界を巡る、答えの出ない問いを抱え続ける存在とも言えるわけだ。
花岡に「卑しい餓鬼(がき)そのもの」とまで言われた福沢。激怒し、株主としての権限を使って対抗策を打ち出すのだった。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







