『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク
三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第3回では、転職を左右する「縁の正体」について解説する。
転職のほとんどは「縁」で決まる
今の仕事を辞めるべきなのか、続けるべきなのか。悩める32歳の女性高校教師・井野真々子は、「転職に失敗しないための秘訣は『縁』を大事にすることだ」という転職代理人・海老沢康生の言葉に、少し驚いた表情を見せます。
ここで「縁」を頼りにしてしまうと、紹介者の知人に借りを作るようで嫌だ、という気持ちも一部あるようです。
作中で、海老沢が「仕事、職場、これってすべて縁なんだよ」と語っている通り、仕事探しの本質は「縁」だと私も考えています。
「縁」とは具体的に「(1)運・(2)タイミング・(3)相性」の3種類に分解することができます。
(1)運は文字通り、天から幸運が降ってくるかどうかです。
たまに、「優秀な人ならいくらでも転職できる」「特別なスキルがない平凡な人に転職はできない」と決めつけている人がいますが、それはかなりの偏見です。
当然、優秀かどうか、非凡なスキルがあるかどうかも大事なことではありますが、それ以上に大事なのが運です。
転職活動は実力勝負だ、と考えていると痛い目に遭ったり、せっかくのチャンスを逃したりすると私は思います。
(2)タイミングも非常に重要です。
新卒採用では、多くの人が大学3~4年次に就職活動をします。企業もそのタイミングで新卒一括採用の募集をしています。
しかし、中途採用は大きく様子が異なります。今すぐに転職したいと思っても、希望条件や経歴に合致する求人が今日時点で募集中かどうかは分かりません。
中途採用の求人は常にあるわけではないですし、数カ月もすれば枠が埋まってしまい募集停止してしまいます。タイミング良く、自分に合う求人を見つけることができなければ、転職活動はなかなか前に進まないでしょう。
(3)相性が、実は一番重要かもしれません。
つまりは、その企業が求める人材像とのマッチングです。また新卒の時と比べてみると、大学生の就職活動では、高学歴で資格持ちで、コミュニケーション能力が高そうな人材であればどこの企業も欲しがります。
しかし、中途採用の場合は、個々の求人ごとに求める人材の条件が細かく指定されており、「優秀な人かどうか」よりも「募集条件に合う人材なのかどうか」の方がはるかに優先されます。
新卒採用では間違いなく、能力が問われます。しかし、中途採用で問われているのは相性です。
以上の(1)~(3)、すべてひっくるめて「縁」と表現することができそうです。人との出会いや結婚などと同じく、転職活動においても、たまたまの巡り合わせが人生を大きく左右します。
縁故採用の落とし穴
「縁」にまつわる一連の話に心を動かされ、井野はついに高校教師を辞職することを決意します。海老沢が働く会社に、彼のアシスタントとして入社することになったのです。
前回・第2話で、つい最近まで「今は転職しない」と言っていたのが嘘のようですが、これはマンガのストーリーなので深く突っ込まないでおきましょう。
転職活動において、「縁」は大事です。しかし、人間関係やコネクションだけで転職を決めるのはやや危険ではないかと、私は思います。仕事とプライベートは、やはり別物だからです。
転職したいなぁ……今の会社を辞めたいなぁ……と思ったとき、「じゃあ、ウチに来なよ」と言ってくれる友人が身近にいたら、ついついその誘いに乗りたくなるものです。
転職活動の応募書類作成、業界選び、企業研究、面接対策など大変なプロセスをすべてすっ飛ばして、個人的に仲良くしている人が内定を持ってきてくれるなら、非常にラクです。
ただし、その職場が本当に、毎日自分が生き生きと働ける会社なのかはほとんど未知数です。
先ほど述べた「縁」の3要素のうち、もっとも重要だと説明した(3)相性の問題があります。
友人の紹介だと言っても、たいていの場合、その友人が直属の上司になって毎日面倒を見てくれるわけではないでしょう。上司はまったく知らない人ですし、今後担当する業務がどうなるかも分かりません。
偶然降ってきた「縁」を大事にしつつも、「縁」だけで転職を決めることなく、常に慎重に考えて転職先選びを進める姿勢が大事です。
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク







