Yコンビネーターイベントで投資家とスタートアップ創業者が交流する様子(サンフランシスコで3月)Yコンビネーターイベントで投資家とスタートアップ創業者が交流する様子(サンフランシスコで3月)
PHOTO: POPPY LYNCH FOR WSJ

 人工知能(AI)を使った音声サービスのスタートアップを立ち上げたハンス・イバラ氏は、大きなチャンスに恵まれた。オープンAIやアンソロピックといった大手AI企業が取引を獲得しようと必死になり、値引きを次々と打ち出しているのだ。

 シリコンバレーでは、イバラ氏のようなスタートアップ創業者は新たな顧客獲得を競うAI企業から取引を提案され、コンピューティングクレジットの恩恵を受けている。AIを活用したプログラミング支援ツールを手掛ける米新興カーソルは、7月5日まで75%の割引を提示していた。同社は、実業家イーロン・マスクの宇宙企業スペースXに買収されている。

 オープンAIやアンソロピックなどの企業で拡大するAI営業部隊からの魅力的な提案が殺到しているため、スタートアップ創業者は当初予定していたほど早期に資金調達する必要がなくなったと述べている。またAI企業同士を競わせることができたという人もいる。クラウドコンピューティングやトークン(AIコンピューティングの基本単位)に関して、複数の企業から総額300万ドルを超えるクレジットの提示を受けたケースもあるという。ピッチブックによると、これは米国のシードラウンド(創業初期の資金調達)の中央値に相当する規模だ。

 アルファベット傘下のグーグル・クラウドは一部のスタートアップに最大50万ドルのクラウドクレジットと「ジェミニ」モデルへの早期アクセスを提供している。また、AI開発部門ディープマインドのエンジニアへの特別アクセスを提供することもあると、グーグルの広報担当者は述べた。マイクロソフトとアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)もスタートアップに特別な特典を提供している。

 ビジネスユーザー獲得を巡る激しい争いは、AI企業が安定した収益源を模索する中で起きている。創業間もないスタートアップを顧客として獲得することで、自社のツールが時間とともにその企業の成長に不可欠なものになることを期待している。

 オープンAIとアンソロピックは、新規株式公開(IPO)を控えて利益率改善への大きな圧力に直面しながらも販促や特典を提示している。また、「オープンウエート」と呼ばれる無料モデルや、低価格モデル(多くは中国で開発)との競争に直面している。

 ダイアロガスの共同創業者であるイバラ氏は、提供されるトークンは「製品を成長させる規模に直接的に比例する」とし、「これが利用できない場合は、トークンを購入するための資金を調達する必要があるだろう」と述べた。