「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。
「経験はあっても現場で通用しない人の特徴」とは?​ ライター照宮氏が報告する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

経験はあっても現場で通用しない人の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

自分の能力のなさを痛感したエピソード

以前、海外の現地採用で、工場の経理として働いたことがある。
工場の経理は初めてだったが、就職してからずっと経理畑だったし、簿記二級も持っていたので、正直、なんとかなると思っていた。

ところが、実際の業務は、想定していたものとはかなり違った。
デスクで数字を処理する仕事より、現場への対応が圧倒的に多かった。
棚卸の数字が合わなくて毎週現場に駆り出されたり、同僚に依頼した資料がいつまでも出てこなかったり――毎日がイレギュラーで、知識を使おうにも、そもそも知識が通用する場面がない。

このときほど、自分の能力のなさを痛感したことはない。

絶望感が言語化された「知頭」と「地頭」とは?

東証プライム上場社長で、数々のベストセラーを出している木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』でこう述べている。

知頭モードでの「考える」とは「過去に培った知識に答えがあるかどうかを考える」であって、「問い」に対し「答えそのものを考える」わけではありません。
――『地頭スイッチ』

『地頭スイッチ』では、人間の脳の機能を「知頭(ち・あたま)」と「地頭(じ・あたま)」の2つに分けて説明している。

「知頭」は知識をため記憶することで、「地頭」は思考し理解することだという。

あの現場で私がしていたのは、考えることではなく、知識を検索することだった。
しかしその検索先に、答えはまったくなかった。

「知頭モード」は、未知の問いの前では機能しない。
知識の量がどれだけあっても、答えそのものをゼロから考える力がなければ、現場では太刀打ちできないことがある。

本書によって、あの時の“絶望感”がようやく言語化された。

経験や知識が豊富な人ほど、知頭モードで「考えた」つもりになりやすい。
引き出しが多いほど、そこから答えを探すことに慣れてしまうからだ。
でも現場が求めているのは、過去の答えではなく、目の前の問いに向き合う力なのかもしれない。