「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。「地頭が自動的によくなるモゲジョの法則」とは? ライター照宮氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

誰でも地頭が自動的によくなる「モゲジョの法則」とは?Photo: Adobe Stock

上場準備の現場で上司が青ざめた理由

上場準備を経験したことがある人なら、あの独特の緊張感はわかるだろう。
手順のちょっとしたミスが、審査全体に影響しかねない。
関わる人間も多く、誰がどの段階で何をするかが細かく決まっている。

その日も、ある書類の送付作業があった。
まず監査法人に送り、チェックを受けてから関係者へ送付するというものだ。

ところが私の上司は、監査法人ではなく直接関係者宛てにポスト投函してしまった。
上司が封筒を投函し終えたとき、ハッとした。

「監査法人のチェックが先なのでは?」

と声をかけると、みるみる顔が青ざめていった。

一瞬で地頭モードに変わる「モゲジョの法則」とは?

ビジネス書の読者から圧倒的な支持を集める経営者・木下勝寿氏は、著書『地頭スイッチ』の中でこう述べている。

知頭モードのDoタスクは、手を動かすことが目的となり、成果にはつながりません。
一方、地頭モードの場合、どんなDoタスクでも必ず最初にモゲジョを確認します。

──『地頭スイッチ』より

「モゲジョ」とは、目的・現状・条件の頭文字。
木下氏のベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則』で最も反響があったのが「ピッパの法則」(ピッと思ったらパッと行動する)らしいが、『地頭スイッチ』を読み終わると、脳にこびりつくのがこの「モゲジョの法則」だ。
「モゲジョの法則」とは、誰でも一瞬で地頭スイッチが入る方法。
モゲジョ――この言葉を思い出すだけで、自動的に地頭モードへ切り替わる。

地頭モードで動く人は、何かに着手する前にまず「モ(目的)ゲ(現状)ジョ(条件)」の3つを確認する。

逆に言えば、モゲジョを確認せずに動き始めることは、地図なしで目的地に向かうようなものだ。
途中まで進んでから「道が違う」と気づいても、すでに時間と労力は失われている。

あのとき上司の頭にあったのは、おそらく「早く送らなければ」という気持ちだけだったのだと思う。

仕事全体の思考の質が変わる!

だが、動く前に「モゲジョ」を確認する習慣が身についていれば、焦った瞬間でも目的が飛ぶことはなかったはずだ。
忙しいとき、焦っているとき、人は何も考えずにすぐ行動しやすい。
でもそういうときほど、一旦立ち止まって「モゲジョ」を確認する。
そのひと手間が、やり終えてから目的とズレていたと気づく、あの徒労感を防ぐ唯一の方法なのかもしれない。