製薬フロンティア写真提供:塩野義製薬

国内外の優秀な人材を確保するために製薬業界で人事制度改革が加速する中、塩野義製薬が雇用の聖域にメスを入れた。2027年度をめどに定年を事実上撤廃し、成果次第で理論上は70代、80代になっても現役時の処遇水準を維持したまま正社員として就労できる仕組みを整備する。さらに終身雇用の象徴であった退職一時金を廃止し、確定拠出年金(DC)へ一本化する方針を固めた。同社が旧来の日本型雇用との決別に至った理由とは何か。連載『製薬フロンティア』の本稿では、改革をけん引する河本高歩人事部長に、その狙いと社内に巻き起こるあつれきの真相を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 猪股修平)

なぜ「真面目な塩野義」から脱却するのか?
社員の「好奇心」を刺激する独自の人材投資

――塩野義製薬では近年、グローバル化を念頭に人事制度の刷新を進めています。人事戦略の全体像と具体的な施策について教えてください。

 人事戦略の柱は大きく二つに分かれています。一つはグローバル経営戦略に沿った人事施策をしっかり打ち出すこと。もう一つは、社員が塩野義で高いモチベーションを持って働ける最高の職場を提供し、働きがいを整備していくことです。

 特徴的な施策としては、2019年に導入した「自己投資支援制度」があります。社員自らが成長や変革に必要だと考える知識、スキル、経験を習得するための費用を、1人当たり年間最大30万円まで会社がサポートする仕組みです。制度の利用率から社員の考え方や学ぶ姿勢、会社の変化が表れてくると捉えており、人事の重要業績評価指標(KPI)としています。

――なぜ製薬会社において、そこまで社員個人の学びに投資するのでしょうか。

 塩野義は昔から「真面目」といわれてきましたが、そこから脱却したい思いがあります。

製薬業界で類を見ない人事制度改革に着手した塩野義製薬の狙いには、旧式の制度と決別し、グローバルスタンダードに立つ強い意志が背景にあった。一方、大きな変化に対する社内でのハレーションもあったという。次ページでは人事制度を刷新する狙いの神髄や社内外で起きた変化について、河本部長に語ってもらう。