テンポよく相槌を打ち、間を空けず、笑って、場を盛り上げる。それができる人が「コミュ力の高い人」とされてきた。感じはいい。話も途切れない。嫌われてもいない。それなのに、深い友達がいない人がいる。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏が新刊で、その理由を身も蓋もない一言で説明している。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局/淡路勇介)

自分の言葉で話せるようになりましょう。Photo: Adobe Stock

「いい人止まり」で終わってしまう人

話し方の本を読み、うまく話せるようになった。それでも、望んでいた結果は手に入らない。片石氏はその状態を、こう書く。

友だちは絶対にいたほうがいい。どれだけお金を持っていても、信頼できる人が一人もいないようじゃ幸せとは言えない。でも、頭がいいだけでは人とはつながれない。話し方を身につけても、話がうまくなるだけで、いい人止まり……。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

いい人止まり。感じはいい。ただ、誰の記憶にも残っていない。

平成のバラエティ番組は、「音」だった

片石氏は、お笑い芸人の永野氏と対談したときに言われた一言が忘れられないという。

「平成のバラエティ番組は、音だった」

ひな壇の芸人がガヤガヤと喋り続け、笑い声を絶やさず、間が空かないように音を被せる。テレビには決められた尺があり、その尺を音で埋めることで番組は成立していた。間が空けば「おい! なんか言えよ!」とつっこまれる。

問題は、その作法が、会話の作法として残ってしまったことだ。

平成のバラエティの影響もあってか、コミュニケーションは音であると勘違いしている人が少なからずいます。
コミュニケーション能力が高い人というのは、リズムよく、相槌やツッコミを入れ、盛り上げる人。もちろん場を盛り上げるという意味では大切な能力です。
ただ、それだけでは自分の言葉で話し、影響力を持つことはできません。

――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

飲み会で誰よりも喋った。全員を笑わせた。帰り道、なぜか虚しい。音は鳴っていたが、詞がなかったからだ。

ワースト1は、沈黙が怖いこと

いい人なのに友達が少ない人の、最大の特徴。それは、沈黙を恐れて、音で埋めてしまうことである。

相手が言葉を探して黙る。その三秒に耐えられず、「で、結局どうなの?」と口を挟む。自分が黙るのも怖いから、反射で返す。感じよく、速く、それっぽく。

なぜ、そんなに沈黙が怖いのか。片石氏の答えは明快だ。

オーディションだと思っているから、評価が怖い。評価が怖いから、沈黙が怖い。だから、音で埋めようとしてしまう。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

会話の場を、採点される場だと思っている。だから、間を空けない。速く返す。それは相手を見ているのではなく、自分の点数を見ている状態だ。

沈黙は、信頼

処方箋は、拍子抜けするほど簡単だという。

それは、5秒、黙る。

音で返さず、沈黙をつくる。そのあいだに、まだ言葉になっていない感覚を自分の中でつかまえる。うまいことを言おうとせず、ゆっくり話す。

そして、黙れる人のまわりでは、不思議なことが起きる。

この人は、自分が言葉を探している時間を、ちゃんと待ってくれる
そう信じられる関係では、沈黙はむしろ豊かな時間になります。そして面白いことに、自分が5秒沈黙しはじめると、相手も安心して言葉を探しはじめるのです。

――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

沈黙は、気まずさではない。信頼だ。

コミュ力が高いとされる人ほど、音を鳴らすのがうまい。うまいからこそ、黙れない。黙って待つのはテンポも悪いし、間も持たないし、どう見てもコミュ力が高そうには見えない。

ただ、相手が自分の言葉を取り戻すのは、その五秒のあいだだけだ。
黙って待ってもらえた人は、その時間を忘れない。友達とは、たぶんそうやってできていく。

(本稿は、『自分の言葉で話せるようになりましょう。』の一部を引用したオリジナル記事です)