『羆嵐』(c)吉村昭(原作)加藤キャシー(漫画)/新潮社『羆嵐』(c)吉村昭(原作)加藤キャシー(漫画)/新潮社

日本史上最大の獣害事件「三毛別羆事件」を題材に、人間と自然の圧倒的な力の差を描くマンガ『羆嵐』(吉村昭/加藤キャシー)。大正4年、北海道・三毛別の区長である大川嘉吉は、養子の少年・幸雄を村へ連れ帰る途中、深い山中で道に迷ってしまう。そこで出会ったのは、「鬼銀」の異名で恐れられる荒くれ者の羆撃ち・山岡銀四郎だった。やがて山には、不穏な気配が静かに忍び寄る。戦慄の実話をもとに描かれる第1話前編を掲載する。

【あらすじ】

 大正4年の北海道。開拓が進む一方で、広大な原生林には人の手が及ばない自然が広がり、人間はその秩序の中では「ただの闖入者」にすぎなかった。

 三毛別の区長・大川嘉吉は、養子となった少年・幸雄を村へ送り届けるため山越えの道を選ぶ。困っている人を見ると放っておけない嘉吉は、道中でもけがをした子どもや動物を助けようとする心優しい人物だった。

 しかし、山越えを選んだ嘉吉たちは深い山中で道に迷い、暴れる雄鹿に襲われかける。窮地を救ってくれたのは羆撃ち・山岡銀四郎だった。

 獲物が取れず気が立っていた銀四郎は、礼を言う嘉吉に金を要求し、周囲から「鬼銀」と恐れられる理由を見せつける。それでも遭難を避けるため、嘉吉は銀四郎に道案内を依頼し、ぎこちない道中が始まる。

 そんな中、幸雄が突然姿を消し、二人は薄暗い山中を必死に捜索する。やがて嘉吉は土に埋もれた鹿の死骸を見つけ、不吉な違和感を覚える。ようやく幸雄を発見するも、少年は「ここから出ると来ちゃうから」と怯えた表情で動こうとしない。そして次の瞬間、山の静寂を破る“何か”の存在が、すぐそこまで迫っていることが示される。

 実在の惨劇へとつながる恐怖の序章が幕を開ける。

※マンガ内にショッキングな描写があり、一部を黒塗り加工しています。
『羆嵐』(c)吉村昭(原作)加藤キャシー(漫画)/新潮社『羆嵐』(c)吉村昭(原作)加藤キャシー(漫画)/新潮社
『羆嵐』(c)吉村昭(原作)加藤キャシー(漫画)/新潮社『羆嵐』(c)吉村昭(原作)加藤キャシー(漫画)/新潮社