「人を襲ったクマ」を解剖してわかった、胃に「大量に詰まっていたもの」人家に侵入した理由にゾッとする写真はイメージです Photo:PIXTA

2025年7月、岩手県北上市和賀町の住宅で、居間にいた81歳の女性がクマに襲われて命を落とした。なぜ、クマは人家にまで侵入して命を奪ったのか。この加害クマを解剖した、岩手大学農学部でクマを研究する山内貴義准教授に話を聞いた。(風来堂 稲葉美映子)

なぜクマが人家にまで侵入して
命を奪うケースが発生したのか

 2025年7月、岩手県北上市和賀町の住宅で、居間にいた女性がクマに襲われ、命を落とした。なぜ、人家にまで侵入して命を奪うケースが発生したのか。

 ヒグマもツキノワグマも、基本的には植物質を中心とした雑食性の動物だ。ヒグマは、フキやセリ科などの草本やヤマブドウ、サルナシなどの果実を、ツキノワグマはブナやコナラ、ミズナラなどの実を好んで食べる。

「本来クマは草や実を中心に食べる動物です。シカやイノシシなど死んだ動物の肉を食べることはありますが、人を食べようとして襲うケースは極めてまれです」(山内准教授)

 世間では、「ヒグマ=凶暴で肉食」「ツキノワグマ=温厚で草食」としばしば語られるが、実際にはどちらも当てはまらない。

 日本では北海道のみに生息するヒグマは、体長2.2m~2.3m、体重150kg~250kg。本州と四国に生息するツキノワグマは、体長1.1m~1.5m、体重80kg~120kg。

 どちらも植物質を中心とした雑食性であり、基本的に性格は臆病で人間を避ける。体格差こそ大きいものの、行動の危険度は両者ともに状況次第だ。

解剖した加害クマの胃から
「大量に出てきたもの」

 重要なのは「種の違い」ではなく、「環境と状況」だ。空腹やストレス、刺激、子を守る本能など、引き金さえあれば、どちらの種でも人を襲うリスクは十分にある。

 北上市和賀町の住宅で起きた死亡事故では、その後、加害クマは駆除されるが、この加害クマを解剖した、岩手大学農学部でクマを研究する山内貴義准教授に話を聞いた。