自衛隊と中国軍が戦闘状態に入れば、日中の貿易が停止します。それが、日本国民の生活にどのようなインパクトを及ぼしうるかは、身の回りにある家電製品やパソコン関連部品、衣類、日用品の製造国を調べて「中国製(メイド・イン・チャイナ)」という文字を確認するだけで容易に想像できます。

 こうした「製品」だけでなく、日本は中国からさまざまな資源や部品、材料などを輸入しています。リチウムイオン電池に必要な希少金属(レアメタル)をはじめ、畑に撒く肥料や、抗生物質を製造する材料も、中国からの輸入が途絶えれば生産は危機に瀕します。

 国会での「台湾有事発言」以降、日中関係は急速に険悪化し、中国から日本への旅行者は激減しました。日本政府観光局(JNTO)が2026年1月21日に発表した統計によると、高市発言後の2025年12月の中国から日本への旅行客の数は、33万400人で、2024年12月の60万4293人と比較すると、45.3%の減少でした。

 中国政府が自国民に発した、日本への渡航自粛勧告が原因と見られています。

台湾有事への介入が招く
もうひとつの「存立危機」

 いわゆる台湾有事と、日中の直接的な軍事紛争あるいは戦争。どちらが日本にとって、より大きな「存立危機事態」でしょうか?

 日本政府が前者への武力介入を決定することで、それが後者の発生に繋がりうるという基本的な構図を、どれだけの日本人が認識しているでしょうか?

 高市首相の「台湾有事発言」とは、自衛隊が台湾問題で中国軍と交戦する状況は「法的に可能であり、自分はそれを選択肢に含める」との主張でしたが、これはいわば、紛争や戦争の「入り口」の話です。法律などの形式論でそれに賛成する意見も同様です。

 しかし、日本人が先の戦争で多くの犠牲と共に思い知らされたのは、いったん始めた戦争や紛争は、理性的に終わらせるのがきわめて難しい、という現実です。こちらがもうやめたいと思っても、相手が応じなければ、戦いはいつまでも続きます。

 無定見に始めた紛争や戦争が泥沼化・長期化しても、もう後には退けない。もし撤退すれば、それを始めた指導部の面子が潰れる。そうやって、ずるずると戦域を拡大していったのが、1937年から1945年までの日本政府と日本軍でした。

 この国は、またあれと同じことを繰り返そうとしているのでしょうか。