「台湾もウイグルもチベットも中国の国内問題」一見弱腰な日本政府答弁にひそむ非・傍観戦略写真はイメージです Photo:PIXTA

台湾やウイグル、チベットなど中国の周辺は摩擦が絶えない。そうした場面におよぶと、日本政府は「基本的には国内問題」と答弁する。しかし、この表現は単なる中国への配慮ではなく、安全保障を考えた外交上の工夫でもあった。冷戦下から続く中国との複雑な関係を、対中外交を担ってきた実務家の2人が解説する。※本稿は、笹川平和財団常務理事の兼原信克、立命館大学教授の垂 秀夫『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

台湾を中国のものと認めると
台湾有事の際に介入できない

兼原信克(以下、兼原):私は台湾のことを中国国内の未承認政府ではなく、中国とは別個の未承認国家だと思っています。台湾の実態は、まぎれもなく独立した1個の国です。

 外務省条約局(現国際法局)条約課長として日中共同声明の作成を担当した栗山尚一氏(後に外務事務次官、駐米大使)が、退任後に早稲田大学教授を務めていた時、『早稲田法学』(早法74巻4号1999年)という雑誌の中で、日中国交正常化及び日中共同声明の詳細な解説を書いています。

 中国の理屈では、国連の代表権を北京に返すのなら、台湾そのものも北京に返してもらおうとなるわけですが、日本としては、台湾は中国の領土であるとは一言も言っていないんです。

 日本はサンフランシスコ平和条約で台湾を放棄した。ただし、その前にポツダム宣言を受諾していて、その第8項には「カイロ宣言の条項は履行せらるべく」と書いてある。カイロ宣言では、連合国である英米中の戦争の「目的は、(中略)台湾及び澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することにあり」と書いてある。