「お金」大全 #13Photo:PIXTA

終身保険とセットになった医療保険特約を「終身だから安心」と勘違い!よくある誤解だ。医療保険は要注意。終身保障であっても本当に必要なのか、高い保険料に見合うのか疑問符が付く。特集『「お金」大全』(全17回)の#13では、注意を要するポイントと負担を軽くする奥の手を併せて紹介しよう。(くらしとお金のFP相談センター代表 西村和敏)

更新型の医療保険特約を
終身保障の医療保険と勘違いしない

 大手保険会社が販売している、定期(保険)付き終身保険に加入している人は多い。終身保険を主契約とし、特約として掛け捨ての大型死亡保障の定期保険や医療保険を付けたセット商品だ。主契約の終身保険は、かつての高金利時代の「お宝保険」の場合もある。

 50~60代となり、子どもが独立して大型の死亡保障は必要なくなれば、大型死亡保障の定期保険部分は解約して、葬式代のために数百万円の終身保険だけを死亡保障として残したい。一方医療特約は、高齢になってからも必要だから継続したい――そう考える加入者が多い。

 その後、主契約の終身保険の保険料の支払いは60歳や65歳で終了するが、終身保険としての死亡保障は死ぬまで継続する。特約の医療保険についても同様で、保険料の支払期間が60歳や65歳で終了し、以後も保障は死ぬまで継続する。そう勘違いしているケースがよくある。

 しかし、医療保険については、主契約の保険料の支払期間を終えても保障を継続したい場合、保険料の支払いが必要となる。しかも、10年ごと(15年や20年ごとの商品もある)に医療保険特約が更新されて年齢に応じた保険料に値上げされていく。

 10年間の定期医療保険(入院日額1万円、手術給付金10万円、先進医療給付金100万円の保障)の保険料をネットで試算できる保険会社で見てみると、60歳で月額7450円、70歳で月額1万1080円、80歳で月額1万6020円となった。大手保険会社の保険料ならこれを上回るだろう。さらにがんや3大疾病時の保障も上乗せすると月額2万~3万円にもなる。

 しかも、医療保険特約は80歳や90歳までしか継続できない場合が多い。保険証券に記載されている保険商品の名称は「終身保険」だから、「老後いつか入院したときに役に立つだろう」と保険料を払い続けようとしても、できないのである。

 つまり、80歳や90歳までに入院をしなければ、それまで払った医療保険特約分の保険料はムダになる可能性があるのだ。終身保険とはあくまで死亡時の保険金を終身保障するものであって、特約の医療保険は必ずしも終身保障ではない。医療保険特約が10年等の更新タイプではなく終身払いタイプの場合もあり、保険料の値上げがなく死ぬまで医療保険特約分の保険料を払い続けられれば、医療保障を続けることはできる。

 10年等の更新タイプの医療特約のような80歳や90歳で保障が切れる医療保険ではなく、終身保障の医療保険に加入している50~60代は保障が切れる心配はない。中でも60歳払い済みや65歳払い済みの終身医療保険に加入している人はあと十数年で保険料の支払いが終わる。無事払い終えて終身の医療保障を手に入れて老後を迎えることができる。

 問題は終身払いの終身医療保険に加入している場合や、これから加入しようとしている場合だ。終身払いの保険は年金生活になってからも保険料を払い続けなければならない。本当に払い続けられるのか、よく考えるべきだ。

 次ページ以降では、本当に終身医療保険が必要なのか払い続けられるのか、よくよく考えるべき理由を説明しよう。