しかしよく考えてみると、お酒をよく飲む人の多くは、同時に喫煙者でもあります。肺がんの本当の原因はタバコであり、飲酒と肺がんの間に見えた関係は、「喫煙」という第三の要因による交絡にすぎない可能性もあります。もし喫煙の影響を統計的にうまく取り除かなければ、(もし事実はそうでなかったとしても)誤って「飲酒が肺がんの直接の原因だ」と安易に結論づけてしまうリスクがあるのです。
長生きしたくて
運動するのは正しい?
似たような話は数えきれないほどあります。
「運動をよくする人は長生きする」という研究結果も広く知られていますが、これをそのまま「運動さえすれば誰でも寿命が延びる」と理解してしまうのは早計です。実際には、運動する人はもともと健康な体を持っていることが多く、また経済的に余裕があってジムに通える、健康的な食事をとることができる、定期的に医療機関を受診することができるといった背景を持っています。
これらの要因自体が、健康長寿に寄与している可能性が高い。つまり「運動」と「長寿」の間に見える関係の一部は、経済状況や生活習慣といった第三の要因によって説明できるかもしれないのです。
もちろん、運動が健康に良い効果を持つこと自体は確かですが、「どの程度効いているのか」を正しく測るには、こうした交絡要因を慎重に区別する必要があります。
医療の現場でも、交絡となりうる問題は頻繁に起こります。
「薬を飲んでいる人ほど寿命が長い」という結果を見たとき、それが薬の効果を示しているとは限りません。薬をきちんと飲む人は、もともと健康意識が高く、生活習慣に気を配り、医者に定期的にかかる人である可能性が高い。つまり薬の効果に見えるものが、実際には「健康意識」という交絡要因の影響かもしれません。
逆に「薬を飲んでいる人ほど死亡率が高い」というデータが出ることもありますが、それは「病気が重いから薬を処方されている」だけの話かもしれません。この場合も、病気の重症度が交絡因子として働いているのです。







