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ロシアのウクライナ侵略は、抑止が崩れた瞬間に戦争が始まるという厳しい現実を突きつけました。中国、ロシア、北朝鮮が極超音速兵器を進め、脅威が高まる中、台湾有事は「起こるかもしれない」ではなく「いつ起こるか」を議論すべき段階にきています。防衛産業の衰退は、平和の崩壊に直結します。シーレーンの寸断や米軍抑止力の低下、ミサイル・ギャップ──日本は自国を守るための技術力と防衛産業の再構築を急がなければなりません。※※本稿は、桜林美佐『軍産複合体:自衛隊と防衛産業のリアル』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

有事の発生は抑止の失敗である

→前記事:『「経済優先で防衛力削減」の落とし穴、国民も賛同した英サッチャー政権の“軍縮”の教訓』を読む

 2022年2月24日にロシアによるウクライナ侵略が始まりました。それ以降、ウクライナの人々が命がけで必死に抵抗している姿には、胸が張り裂ける思いになりますし、敬意を表するばかりです。

 しかし、本来、政治は、国民に銃を持たせたり、まして一般市民を攻撃の的に晒すようなことを許してはならないものです。改めて強調しておきたいのは、ウクライナはロシアによる侵攻を許してしまった時点で「抑止に失敗した」という事実です。このことを、日本はわが事として受け止めなくてはなりません。ひとたび侵攻されれば、戦争をせざるを得なくなり、人間同士の殺し合いという残酷な現実が始まってしまうのです。

 抑止を効かせるためには、装備の優越とそれを使う精強な軍の両輪が必要です。装備を刀にたとえれば、常にぴかぴかに磨かれていることが重要なのです。そして、その刀を抜いた時点で、抑止は失敗です。装備は抜かない名刀でなければならないのです。

 平和を継続するためには「抑止力の強化」しかありません。そして、そのためには相手に「絶対に手を出したくない」と思わせる軍事力と、その軍事力を支える防衛産業が不可欠なのです。

シーレーンの安全が確保できなくなると……

 日本の防衛産業の現状をお話する前に、まず日本の置かれている安全保障環境を改めて確認する必要があると思います。

 わが国が、地政学的に中国、ロシア、北朝鮮の3正面と対峙しなければならない位置づけであることは、今も昔もこれからも変わることはありません。

 しかし、戦後においてこの3正面の脅威レベルが今ほど高まっていることはないと言っていいでしょう。中国の習近平国家主席が3期目に突入し、台湾統一は必ず実現すると明言しています。その際に武力行使を辞さない、とも言っています。