「大事な場面ほど、気合いを入れるほど空回りしてしまう」――その原因は、脳が「自分」を意識しすぎていることにあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と実践法を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、トップアスリートが実践する「リラックスした集中」=フロー状態のつくり方も書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「気合いだ!」では成果が出ない
――ノバク・ジョコビッチ選手やマイケル・ジョーダンなど、世界的なトップアスリートがトレーニングに「マインドフルネス」を取り入れているという話をよく聞きます。身体を鍛え抜いた彼らが、なぜ心を鍛える瞑想に注目しているのでしょうか。
久賀谷亮氏(以下、久賀谷):アスリートが最高の結果を出すために必要なのは、「リラックスした集中」です。
よく「気合いだ!」と無理にテンションを上げようとする人がいますが、人が何かに集中する際に分泌されるノルアドレナリンが過剰に出ると、逆に身体が極度に緊張してしまい、本来のパフォーマンスが発揮できなくなります。
覚醒したクールな意識と、研ぎ澄まされた注意力が共存する状態、いわゆる「フロー」や「ZONE(ゾーン)」と呼ばれる状態を作り出すのに、マインドフルネスが非常に有効なのです。
――ただリラックスするだけでなく、集中力を高める効果があるのですね。
エゴが消えて目の前のものに集中できる
久賀谷:ええ。脳科学の視点から説明しましょう。
脳のエネルギーを浪費する「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」の主要部位である後帯状皮質は、「自己へのとらわれ」を司る場所でもあります。
「いまこれをやっているのはほかでもなく私だ」という自己意識のことです。こうやって自我が前面に出ている状態は、フローの対極と言っていいでしょう。
「失敗したらどうしよう」とか「自分がいまプレーしている」といった自意識(エゴ)が前面に出ていると、集中力は途切れてしまうもの。マインドフルネスによってこの後帯状皮質の活動を低下させ、自意識を背景に退かせることこそが、フロー状態の正体だと考えられています。
――なるほど。エゴが消えることで、目の前のプレーに完全に没入できるわけですね。
久賀谷:その通りです。
さらにマインドフルネスには、「メタ認知力」を高める効果もあります。自分自身の思考や視点を超越して、全体を俯瞰する能力です。
たとえばサッカーの試合で、自分と敵味方の動きをまるで上空から「鳥の目」で見渡すような広い視野を持つことができれば、それは非常に強力な武器になります。
――マインドフルネスは、脳の働きを最適化するためのトレーニングになるのですね。
久賀谷:はい。これはスポーツの世界に限らず、ビジネスパーソンの重要なプレゼンや、受験生の試験本番など、ここ一番で実力を発揮したいあらゆる場面で応用できます。
過度な緊張を手放し、冷静に状況を俯瞰して最高のパフォーマンスを出すために、私たちもアスリートに学んでマインドフルネスを習慣化するべきではないでしょうか。



