線路を走る田園都市線の電車Photo:PIXTA

同じ列車に乗っているのに、なぜか「街の空気」が違う――。渋谷から伸びる東急田園都市線と、浅草・押上から北へ向かう東武伊勢崎線は、東京メトロ半蔵門線を介して直通する。それでも、沿線の子育て世帯の年収には大きな差がある。東急と東武の開発戦略、そして「サザエさん」と「クレヨンしんちゃん」の家計を手掛かりに、2つの沿線を分けた「街の成り立ち」を読み解く。※本稿は、データ可視化職人のにゃんこそば『データでわかる東京格差 数値の「可視化」で真実をあぶりだす』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

東急と東武、2つの路線に
乗り続けていると見えるもの

 電車に乗り込んだ瞬間、ふと感じる「空気」の違い。多くの人が経験したことのある感覚ではないでしょうか。

 例えば、渋谷から南西に伸びる東急田園都市線と、浅草・押上から北へ向かう東武伊勢崎線(浅草・押上~東武動物公園は愛称『東武スカイツリーライン』)。この2つの路線は、都心で東京メトロ半蔵門線を介して直通運転を行っていますが、同じ列車に乗り続けると、トンネルのあちらとこちらで車内の雰囲気や車窓の風景が変わることに気づきます。

 洗練された街並みが続く田園都市線と、下町の風情が漂う伊勢崎線。なぜ、両者には異なる「空気」が生まれるのでしょうか。その答えは、沿線の住民構成(社会経済特性)や、その背景にある都市の発展の歴史に隠されています。

 まず、両路線の住民層の違いを具体的なデータで比べてみましょう。

 ここでは、田園都市線沿線から世田谷区、川崎市高津区・宮前区、横浜市青葉区を、伊勢崎線沿線から足立区、草加市、越谷市、春日部市を代表例として取り上げます。

 あくまで市区町村という単位でのマクロな傾向をつかむためのものであり、同じ市区町村内でも地域による多様性があることに注意が必要です。

子育て世帯の年収は
沿線でどれほど違うのか

 図1に、子育て世帯(夫婦と子どもからなる世帯)の世帯年収の中央値(推計値)を可視化してみました。住宅・土地統計調査(2023年)の所得階級別世帯数のデータをもとに筆者が推計(注1)したものですが、本調査は標本調査(約20分の1)であり、推計には相当の誤差が伴う点にご留意ください。

図1 子育て世帯の世帯年収の中央値(推計値)同書より転載 拡大画像表示

 田園都市線沿いでは世田谷区(900万円台)を筆頭に、川崎市宮前区と横浜市青葉区でも800万円を超えています。

 これに対し、伊勢崎線沿線では、全国平均(600万円台)に近い水準です。

年収1500万円以上の
世帯比率には大きな差がある

 世帯年収1500万円以上の高所得世帯が占める割合にも大きな違いがあり、港区では子育て世帯の38%、世田谷区では21%、青葉区でも13%を占めるのに対し、足立区では5%、葛飾区では3%、草加市、春日部市では2%前後にとどまります(図2)。

図2 世帯年収1,500万円以上の高所得世帯が占める割合同書より転載 拡大画像表示
(注1)階級別の世帯数から累積相対度数を求め、区分的三次エルミート補間(PCHIP)で補間することにより、連続かつ単調な近似累積分布関数を得た。「1500万円以上」の階級の上限値は推計上の仮定として2500万円とした。