夫婦の会話が減ったり、話していても相手の反応が薄かったりすると、「もう話が合わないのかな」と思ってしまいます。しかし、問題は愛情や相性ではないかもしれません。大切なのは、相手の「頭の中」を知ることです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』の中から参考になるヒントを紹介。今回は、夫婦の会話がうまくいく人がやっている、シンプルな習慣を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

夫婦の会話に悩まない人
夫婦で長く暮らしていると、「話すことがない」という問題が起きることがあります。
もっと厄介なのが、こちらは楽しく話しているつもりなのに、相手はまったく楽しそうではないケースです。
仕事で起きた出来事を話す。
最近気になっているニュースについて話す。
自分がハマっている趣味について話す。
こちらとしては「面白い話をしている」と思っています。
しかし、ふと相手を見ると、反応が薄い。
「へえ」
「そうなんだ」
返事はしてくれるものの、明らかに興味を失っている。
いったい、何が起きているのでしょうか。
なぜ相手は「退屈」するのか
夫婦の会話について、こんな場面があります。
これは、自分の考えをツラツラと話してしまうときに起こります。
「ああ、やってしまった……」と思う瞬間です。
そろそろ話を切り上げないとまずい。
「この話、面白い?」
「あー、そろそろいいかな……」
やはり、こちらの話に飽き飽きしていたのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここで重要なのは、話している内容そのものが「つまらない」とは限らないことです。
本人にとっては、面白い。だからこそ、ツラツラと話せるのです。
問題は、「自分にとって面白い」と「相手にとって面白い」は別物だということです。
夫婦になると、この当たり前のことを忘れてしまいがちです。
一緒に暮らしている。毎日顔を合わせている。お互いのことをよく知っている。
すると、「これくらいわかるだろう」「自分が面白いなら相手も面白いだろう」という感覚が生まれてきます。
しかし、夫婦であっても、頭の中まで同じになるわけではありません。
会話がうまい人は「相手の頭の中」を知る
では、なぜ同じ話でも、興味を持てる人と持てない人がいるのでしょうか。
その理由を考えるヒントが、「ネットワーク」です。
では、どうやって話したら、相手に「わかる」と思ってもらえるのでしょうか。
そのヒントが、「ネットワーク」にあります。
私たちは、これまでに経験したことや、知っていることを頭の中にたくわえています。
そして、たくわえた知識は、それぞれネットワークのようにつながっています。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
私たちの頭の中には、膨大な知識や経験があります。
しかも、それらはバラバラに存在しているわけではありません。
ある言葉を聞けば、別の記憶が呼び起こされる。
ある場所を見れば、昔の出来事を思い出す。
「夏」と聞いて、「海」を思い出す人もいれば、「甲子園」を思い出す人もいる。「受験勉強」を思い出す人もいるでしょう。
この「つながり方」が、人によってまったく違うのです。
同じ「犬」でも、頭に浮かぶものは違う
具体的に考えてみましょう。
犬を見て「かわいい」と思った経験がある人は、「犬」と「かわいい」がネットワーク状につながっています。
でも、過去に野良犬に追いかけられて怖い思いをしたとか、よその犬に噛まれた経験のある人は、「犬」は「こわい」とつながっています。
そういう人は、「犬を見ていると癒やされますよね」と言われても、納得してくれないでしょう。
さらに、「かわいい」や「こわい」という言葉も、今度は別の何かとつながっています。
人によって、「かわいい」は、「コアラ」とつながっているかもしれません。
「こわい」は、「幽霊」や「チェーンソー」とつながっているかもしれない。
これも、人によってつながり方は変わってきます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
同じ「犬」という言葉を聞いても、頭の中で起きていることはまったく違います。
子どもの頃から犬を飼っていた人なら、愛犬との思い出が次々と浮かぶかもしれません。
一方、犬に追いかけられた経験がある人なら、恐怖の記憶がよみがえるかもしれない。
つまり、私たちは同じ言葉を使っていても、同じものを見ているとは限らないのです。
これは夫婦でも同じです。
「夫婦なんだからわかるでしょ」が危ない
むしろ、長く一緒にいる相手ほど注意が必要です。
「妻はこういう話が好きだ」
「夫はこういうことに興味がある」
一度そう思うと、その認識を更新しなくなるからです。
しかし、人の頭の中のネットワークは変わります。
仕事が変われば、関心も変わる。
新しい趣味を始めれば、知識も増える。
人と出会えば、価値観が変わることもある。
5年前にはまったく興味がなかったことに、今は夢中になっているかもしれません。
逆に、以前は好きだったものに、今はまったく関心がなくなっているかもしれない。
毎日一緒にいるからといって、相手の頭の中まで自動的にアップデートされるわけではないのです。
「相手のネットワーク」を更新し続ける
では、夫婦の会話に悩まないために何をすればいいのでしょうか。
答えは、相手の頭の中にあるネットワークを知ろうとすることです。
だから、「面白い」とか「退屈だ」と感じる基準が人によって異なる。
相手に伝わる話し方でまず認識すべきことは、自分と相手はちがうネットワークを持っているということです。
だからこそ、相手に「伝えたいこと」や「してほしいこと」があるなら、相手が持っているネットワークを知っておかなければいけないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、「相手の好みに合わせて話題を選びましょう」という単純な話ではありません。
大切なのは、相手が何に興味を持ち、何と何を結びつけ、何を面白いと感じているのかを普段から知っておくことです。
「最近、何か面白いことあった?」
「それの何がそんなに好きなの?」
「最近、その話よくするよね」
そんな会話を重ねるだけでも、相手のネットワークは少しずつ見えてきます。
そして、それがわかれば、自分の話をするときにも「相手が知っているもの」とつなげられます。
会話は、一方的に情報を投げるものではありません。
自分の頭の中にあるネットワークと、相手の頭の中にあるネットワーク。その2つをつなぐ作業です。
夫婦だから、わかっている。
長く一緒にいるから、説明しなくても伝わる。
そう思った瞬間から、少しずつ「すれちがい」は始まります。
夫婦の会話に悩まない人がやっていること。
それは、たくさん話すことでも、面白い話題を仕入れることでもありません。
「いま、この人は何を考えているんだろう?」と、相手の頭の中を知ろうとし続けることです。
近い関係だからこそ、「わかっている」と思わない。
相手のネットワークを知り、更新し続ける。
それが、夫婦の会話を長く続けるためのコツなのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




