頭のいい人は、知らないことに出会ったとき、ゼロから理解しようとはしません。「これは、あれと似ている」と、自分がすでに知っているものと結びつけます。実はこの「似ているものを探す力」が、新しいことを理解するスピードを大きく左右するのです。本記事では、イラストレーターのヤギワタル氏の書籍『言語化だけじゃ伝わんない 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「初めて見たもの」を初めてのままにしない
海外旅行に行くと、見慣れないものに次々と出会います。
街並みも違う。建物も違う。道路標識も違う。電車の乗り方も違う。
そんなとき、私たちは無意識に「自分が知っているもの」に置き換えて理解しようとします。
以前、外国を旅行したとき、そう思ったことがあります。
高層ビルが並び、道路が整理され、歩いている人の数が多い……。
街をまるごと見たら全然似ていないのですが、そのポイントだけを見ると似ている。
未知のものに出会うと、私たちはちょっと不安になります。
一方で、すでに知っているものは安心できます。
知らないものは、自分にとって良いものか悪いものかわかりません。
だから不安になるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
「西新宿みたいだ」と思ったからといって、その街が西新宿と同じなわけではありません。
それでも、「高層ビルが多い」「道路が整備されている」「人が多い」という共通点を見つければ、まったく知らない街が少しだけ理解できるようになります。
これは、仕事でも勉強でも同じです。
新しい概念に出会ったとき、それを「まったく知らないもの」として頭の中に置いておくと、なかなか理解できません。
ところが、「これって、要するに○○みたいなものか」と、自分が知っている何かにつなげられると、急にわかりやすくなる。
頭のいい人は、この接続がうまいのです。
「知らない」は不安を生む
なぜ、私たちは知らないものを、知っているものと結びつけたくなるのでしょうか。
それは、「知らない状態」そのものが不安だからです。
未知のものとは、マンガやアニメでたとえると、初登場キャラです。
そのキャラが敵なのか味方なのかわからない状態です。
どちらかはっきりしたほうが、不安はなくなっていくのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
初登場したキャラクターが、笑顔で主人公に近づいてくる。
味方なのか。実は敵なのか。裏切るのか。わからないから、気になります。
ところが「この人は主人公の仲間です」とわかれば、ひとまず安心できます。
未知だったものに、「仲間」という知っている枠組みを与えられたからです。
私たちは新しいものに出会うたび、これと似たことを頭の中でやっています。
たとえば、初めて会った人についても、「前の会社の○○さんに雰囲気が似ているな」と思うことがあります。
新しいサービスを見て、「これ、○○のビジネス版みたいなものか」と考えることもあるでしょう。
未知のものを、既知のものと比較する。
それによって「何もわからない」という状態から抜け出しているのです。
頭のいい人は「似ている」をたくさん見つける
もちろん、「○○と同じだ」と決めつけてしまうのは危険です。
大事なのは、同じものだと考えるのではなく、「どこが似ているか」を探すことです。
西新宿と海外の街は違います。
しかし、「高層ビルが多い」という点では似ている。
会社の組織とスポーツチームも違います。
しかし、「それぞれに役割があり、個人だけでなくチーム全体で結果を出す」という点では似ています。
投資と農業も違います。
しかし、「すぐに結果を求めず、時間をかけて育てる」という見方をすれば、似た部分があるかもしれません。
一見、まったく関係のないもの同士でも、見る角度を変えれば共通点を見つけられます。
この「似ているポイント」を見つけることが、新しいものを理解する入口になります。
それは、すでに知っているものと比べ、似ているポイントを探すことです。
これまでに見たことのあるものの中のどれと似ているか。
「コレとアレは少し似ている」という関係性を見極める。
そうやって、自分の頭の中のネットワークに取り込んでいくのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここで重要なのが、「ネットワーク」です。
新しい知識を、単独で頭の中に置いておくのではありません。
「あれに似ている」
「これはあれと反対だ」
「この部分は以前見たものと同じだ」
と、すでに持っている知識につないでいく。
すると、新しいものが「孤立した知識」ではなくなります。
「頭がいい」は、知識量だけでは決まらない
頭のいい人というと、たくさんのことを知っている人を想像しがちです。
もちろん、知識量は重要です。
しかし、それ以上に重要なのは、知っているもの同士をつなげられることではないでしょうか。
100個の知識をバラバラに持っている人と、50個の知識を自由につなげられる人。
後者のほうが、新しいものを見たときに、「これ、あれと構造が似ているな」「この問題って、前に経験したあの問題と同じじゃないか」と気づけるかもしれません。
すると、新しいことを理解するたびに、過去の知識まで使えるようになります。
ひとつ知るたびに、ネットワークが広がっていくのです。
だから、知らないことに出会ったとき、「わからない」で終わらせるのはもったいない。
「これって、自分が知っている何に似ているだろう?」と考えてみる。
「めちゃくちゃ頭いい人」が無意識にやっていることは、難しい知識を披露することではありません。
未知のものと既知のものの間に、一本の線を引くこと。
その線が増えるほど、初めて見るものを理解するスピードも上がっていくのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




