四川の回鍋肉は
キャベツも甜麺醤も使わない
日本の回鍋肉の材料は主に豚肉とキャベツ。ときどきネギやピーマンも入れる。
しかし、李さんは「四川省ではキャベツではなくニンニクの葉を使うんですよ。日本で初めて回鍋肉を食べたとき、そのあまりの違いに衝撃を受けました。それに日本では甘い甜麺醤を使うことがありますが、あれは四川人としてどうしても納得がいきませんね!」と声を大にする。
確かにそうだ。私も四川省に何度も行き、回鍋肉を食べたことがあったのにもかかわらず、李さんから指摘されるまで、まったく気がつかなかった。
そんな自分に対しても軽いショックを受け、目からウロコが落ちまくった。「なぜ今まで気がつかなかったんだろう……」。大げさではなく、数十秒くらい茫然となった。
李さんによると、以前、都内にニンニクの葉を使った本格的な回鍋肉を提供する四川料理店があったそうだが、いつの間にか閉店してしまったという。李さんは「私たち都内在住の四川人が足繁く通って応援するだけではダメだったのか。その店で食べることを楽しみにしていたのに……」と悔しがった。
これはガチ中華が流行る数年前の話だ。今ならニンニクの葉を使った、本場と同じ回鍋肉が食べられる店は増えているだろうが、以前は違った。
日本で人気となった回鍋肉はなぜニンニクの葉ではなく、キャベツを使うようになったのだろうか。
それは「四川料理の父」と言われた陳建民さんがキャベツを使ったことに由来するようだ。日本ではニンニクの葉はあまり栽培されておらず、なかなか手に入らないため、手ごろなキャベツを使って作り、それが普及した。
「Cook Do」の影響も大きいだろう。そのため、多くの日本人は本場の味を知らないまま数10年間を過ごし、「回鍋肉といえば、豚肉とキャベツの炒め物」と認識したのだ。
この話を聞いたあと、私は何人もの日本人に「ねえねえ、知ってる?」と聞いて回った。日本人の中には「へえー?」と驚く人もいたし、「ふーん、そうなんだ」とあまり関心を示さない人もいた。







