広東・四川だけじゃない! 「日本の中華料理」が急速に多様化しているワケ日本の中華料理に生まれた新たなトレンドとは? Photo:PIXTA

日本の中華料理界に新しいトレンドが生まれている。日本の中華といえば、横浜中華街などに代表される「伝統中華」やいわゆる「町中華」、埼玉県川口市などにできた「新興中華」など、新旧いくつかの系統があるが、それらとは一線を画す、常識にとらわれない創作料理や珍しい地方料理などが続々に登場しており、急速に多様化が進んでいる。(ジャーナリスト 中島 恵)

日本の中華料理に
新たなトレンド

 日本の美食の粋が集まる東京・銀座。「ブルガリ」など有名ブランド店が立ち並ぶエリアに、2020年秋にオープンしたのは雲南料理をベースとする中華料理店『御膳房 二十四節気之華魂和装(ごぜんぼう にじゅうしせっきのかこんわそう)』だ。

 長い店名だが、同店を含め、六本木の『御膳房』や銀座『百菜百味』などを経営する東湖社長の徐耀華(じょ・ようか)氏が「もともと中国の暦である二十四節気は、日本の方々にとっても身近なもの。もっと季節感や旬が感じられるような中華料理を味わってほしい」と思い、オープンした。

「華魂和装」とは、中華の魂で、和の装いという意味で徐氏が考案した造語。調理法などは中華の手法を使っているが、著名な芸術家・北大路魯山人が所有していたお盆や伊万里焼、有田焼などの骨董の器を使用し、店の内装なども含めて、和のテイストをふんだんに盛り込んでいる。

キノコ鍋には珍しいトキイロヒラタケなど10種類ものキノコを使う『御膳房』の名物料理、キノコ鍋には珍しいトキイロヒラタケなど10種類ものキノコを使う 写真:筆者撮影

 二十四節気を重視していることから、メニューは月2回、1年で24回変えている。仕込みに時間がかかることもあり、ランチ、ディナーともにコース料理のみで完全予約制を取っている。日中双方の旬の食材を各地から取り寄せて使用するのがこだわりだ。ベースは雲南料理で、雲南省の名物である「キノコ鍋」が主菜になっているが、雲南料理の枠を超えた手の込んだ創作料理の数々に、おそらく中華料理に詳しい日本人であっても「こんな中華もあったのか……」と感嘆させられることだろう。

 実は、同店のように従来とは異なる新しいタイプの中華料理や珍しい地方料理を打ち出す潮流は、ここ数年、日本の中華料理界で顕著になってきている。