辞めてほしくない人ほど辞めていく……。2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、組織のすれ違いを読み解きます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
小さな無理の積み重なり
仕事ができる。責任感もある。
周囲から頼られ、困っている人がいれば自然に手を差し伸べる。
そんな人が、ある日突然、会社を辞めてしまうことがあります。
周囲は驚きます。
「評価されていたのに、なぜ」「重要な仕事を任されていたのに」と。
しかし、本人にとっては突然ではありません。小さな無理が積み重なり、もう続けられないところまで来ていたのです。
何でも同じようにできるわけではない
優秀な人ほど辞めていく職場では、能力のある人に仕事が集まりすぎていることが往々にしてあります。
「あの人に頼めば早い」「最後はあの人が何とかしてくれる」。
そうして難しい案件や急ぎの仕事が次々に任される。本人も期待に応えようと頑張るため、表面上は問題なく仕事が回ります。
けれども、その「問題なく回っている状態」こそが危険です。
仕事を任せる側は、成果を出している人を見て「この人にはまだ余裕がある」と考えます。しかし本人は、得意だから楽にこなしているとは限りません。
周囲の期待を裏切らないように、苦手なことまで引き受け、見えないところで無理をしているかもしれないのです。
完璧な人はいません。どんな人にも得意不得意があり、持ち味がある。
ある仕事で成果を出しているからといって、その人が何でもできるわけではないのです。
それなのに思考停止で同じ人に負担をかけ続けていれば、「自分を役立てられるのはここではない」と優秀な人が会社を去るのは当然でしょう。
その人らしい強みを、無理なく発揮できるように
また、優秀な人に頼ることで成り立っている職場では、周囲が育ちにくくなります。難しい仕事はいつも同じ人に集まり、ほかの人には経験を積む機会が回ってこない。
その結果、ますます「あの人にしかできない仕事」が増えていきます。
これは、組織の設計の問題です。
リーダーに必要なのは、優秀な人を引き留めるために、励ましたり評価を上げたりすることだけではありません。誰に何が集中しているのか、誰の苦手を誰が補っているのか、その負担が一方的になっていないかを観察し、構造的に捉えることです。
そして、本人が「もう難しい」と言い出す前に、役割や仕事量を組み替えていくことです。
優秀な人は、たくさんの仕事を抱えられる人ではありません。その人らしい強みを、無理なく発揮できる人です。
一人の万能さに頼るのではなく、それぞれの得意と不得意を持ち寄り、凸凹を補い合える組織をつくる。その視点がなければ、できる人ほど黙って無理を重ね、やがて職場を去っていきます。
「あの人なら大丈夫」と感じたときこそ、立ち止まってください。
その安心感の裏で、誰か一人が組織の無理を引き受けていないか、と。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太