イギリス国防省がこの事態に気づいたのは、メールが送られてから約1年半後のことだった。とあるアフガニスタン人がFacebook上で「関係者のデータを持っている」と自慢し、一部を公開したのだ。

 これを見たイギリスの人が、地元出身の議員と国防省副長官に通報。政府が慌てて事態の収拾に乗り出した。

 対応の一環で、時のイギリス政権は裁判所に「報道の差し止め」を申し立てた。これは、報道によって関係者にさらなる危険が迫ると考えられたためだという。

 裁判所は申請を受理し、報道の禁止だけでなく、のちに差し止め命令が出たという事実そのものの公表も禁じた。この対応は、「スーパー・インジャンクション」と呼ばれている。

 日本語に訳すと、「超差し止め」。「超差し止め」って……。この言葉をニュースで知ったとき、事態の深刻さと日本語のおマヌケさのギャップに、不謹慎ながら頬がゆるむのを抑えられなかった。

英政府が前例のない
差し止めを求めた

 あれ?報道できないんじゃなかったの?

 私、ニュースで知ったけど?

 もとはそうだったのだが、2025年7月、裁判所が差し止めを解除したのだ。これにより、一連の漏洩や対応が公開され、一斉に記事が出た。

 解除時の説明によると、タリバン側は旧政府から提供された情報をすでに入手しているため、命令の存在が明らかになっても関係者の危険性が大幅に高まるほどではないとのことらしい。

……ん?なんか、しれっとバッドニュースが増えた気がするな。情報はもう渡ってしまっていて、すでにだいぶ危険ってこと!?

 さて、たった1通のメールが引き起こした被害は甚大だった。

 莫大な金額が協力者を極秘で国外に脱出させる作戦などに使われたのだが、うまく亡命できたとしても、今後が危なくてしかたがない。

 ファイルに載っていたうちの数百名は、イギリス国防省を相手に取って損害賠償を請求するそうだ。

 今後、原告はさらに増えることが予想されるため、この凡ミスによる損害額はまだ決着をみていない。