「残業を減らして定時で帰ろう」と会社から言われても、素直に喜べない人は多いのではないでしょうか。残業をしないと仕事が回らないだけでなく、「結局、遅くまで残業してバリバリ働いている人のほうが出世するのではないか」という不安がよぎりますよね。話題の書籍『働き方の科学』より、労働時間が出世に与える影響を明らかにしたエビデンスを紹介します。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)
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「働き方改革」の裏に潜むビジネスパーソンの本音
働き方改革と言いながら、結局は残業をいとわずバリバリ働いている人のほうが出世に有利では、とうすうす感じている人は多いかもしれません。
実際、私たちのキャリアにおいて「どれだけ長く働くか」は、昇進にどの程度影響しているのでしょうか。
書籍『働き方の科学』では、出世の分水嶺となる残業時間の目安があると示唆した研究を紹介しています。ノースカロライナ大学のドラ・ギチェバ教授による研究で、アメリカでGMATという試験を受験した28歳未満の約2000人を追跡したものです(*1)。
このGMATとは、MBA(経営学修士号)を授与する経営系大学院の入試でよく使われる学力試験のことです。つまり、MBAを取得するようなエリート層の若者を対象にしています。
このエリートたちの労働時間と時給との関係を調べることで、週何時間働けば出世に有利かを明らかにしたのです。
結果はどうだったのでしょうか。
「週48時間」が出世コースへの分岐点だった
ギチェバ教授の分析によると、労働時間が週48時間までは、労働時間と昇進や時給の間に相関は見られませんでした。
一方、労働時間が週48時間以上になると、様子が変わってきます。このような長時間労働の集団では、追加で週5時間働くと昇進しやすく、時給が毎年1%ずつ伸びることがわかりました(図1)。
図1 週48時間図2-1 を超えると昇進しやすく、時給も上がりやすい
時給1%の伸びというと、効果が小さいように感じられるかもしれません。しかし、この効果は毎年複利で効いてきます。
例えば、毎日5時間の残業をして週65時間働く長時間労働の人と、残業をしない週40時間労働の人の生涯賃金の差はどれくらいになるでしょうか? 論文に基づいて試算すると、当時の給与水準で約39万ドルの差となりました。物価や為替の変動を考慮して、現在の日本円に換算すると、約1.5億円もの違いになります(*2)。
この違いは、長時間働いて単純に残業代が増えたことだけでは説明できません。生涯賃金の違いの38%は、いわゆる「出世コース」に乗ることで、他の人よりも昇給のペースが速かったことによるものです。
一方、労働時間が週48時間以上になると、様子が変わってきます。このような長時間労働の集団では、追加で週5時間働くと昇進しやすく、時給が毎年1%ずつ伸びることがわかりました(図1)。
図1 週48時間図2-1 を超えると昇進しやすく、時給も上がりやすい
例えば、毎日5時間の残業をして週65時間働く長時間労働の人と、残業をしない週40時間労働の人の生涯賃金の差はどれくらいになるでしょうか? 論文に基づいて試算すると、当時の給与水準で約39万ドルの差となりました。物価や為替の変動を考慮して、現在の日本円に換算すると、約1.5億円もの違いになります(*2)。
この違いは、長時間働いて単純に残業代が増えたことだけでは説明できません。生涯賃金の違いの38%は、いわゆる「出世コース」に乗ることで、他の人よりも昇給のペースが速かったことによるものです。
やはり、出世するにはある程度残業をしたほうが有利なのは間違いなさそうです。
注
*1 Gicheva, D. (2013). Working long hours and early career outcomes in the high-end labor market. Journal of Labor Economics, 31(4), 785-824. https://doi.org/10.1086/669971
*2 ギチェバ教授が論文の中で行っている試算と同じ方法で、筆者が試算しました。具体的には、残業をしない労働者の賃金成長率は5.4%で、週48時間を超えると1時間につき賃金成長率が0.19%ポイント(週65時間の場合3.23%ポイント)上乗せされ、その効果が10年間継続すると仮定しています。その後10年間は残業をした労働者の賃金成長率も5.4%とし、20年間の生涯賃金を比較しています。時給は1990年当時の調査の中央値である15.5ドルに設定されています。日本円への換算に当たっては、アメリカの消費者物価指数の変動を考慮したうえで、1ドル155円として試算しました。
*1 Gicheva, D. (2013). Working long hours and early career outcomes in the high-end labor market. Journal of Labor Economics, 31(4), 785-824. https://doi.org/10.1086/669971
*2 ギチェバ教授が論文の中で行っている試算と同じ方法で、筆者が試算しました。具体的には、残業をしない労働者の賃金成長率は5.4%で、週48時間を超えると1時間につき賃金成長率が0.19%ポイント(週65時間の場合3.23%ポイント)上乗せされ、その効果が10年間継続すると仮定しています。その後10年間は残業をした労働者の賃金成長率も5.4%とし、20年間の生涯賃金を比較しています。時給は1990年当時の調査の中央値である15.5ドルに設定されています。日本円への換算に当たっては、アメリカの消費者物価指数の変動を考慮したうえで、1ドル155円として試算しました。








