「残業を減らすと業績が落ちるのでは?」「たくさん働かなければ日本の競争力が下がるのでは?」そんな不安を抱いていませんか? 実は、長時間労働をするほど「生産性」が下がることを示すエビデンスが存在します。書籍『働き方の科学』から、データが明かす「労働時間」と「生産性」の意外な関係を解き明かします。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)

テレワークをする女性Photo: Adobe Stock

残業を減らすと日本の競争力は下がるのか?

「働き方改革」といって残業をいたずらに減らしていくと、日本人があまり働かなくなり、競争力が減ってしまうのでは、と思っている人がいるかもしれません。

 実はそれは逆で、労働時間が増えれば増えるほど生産性が下がることを示した研究があります

 書籍『働き方の科学』では、第一次世界大戦中のイギリスの砲弾製造工場のデータを使って、労働時間と生産性の関係を調べたスタンフォード大学のジョン・ペンカベル教授の研究を紹介しています(*1)。

なぜ「第一次世界大戦中」の古いデータなのか?

 なぜそんな古いデータを使っているのか不思議に思った人もいるかもしれません。それは、現代ではあまり考えられない、週100時間を超えるような超長時間労働の記録が含まれているからです。

 このデータで、長時間労働をすると生産性がどう変化するのか観察することができます。結果はどうだったのでしょうか。

 図1は、1週間あたりの労働時間と砲弾の生産量の関係を男女別に示しています。男女ともに週48時間あたりまでは、労働時間に比例して生産量は増えています。しかし、週48時間を超えると、生産量はほぼ頭打ちになってしまいます
図1 週48時間を超えると砲弾の生産量は頭打ちになる図1 週48時間を超えると砲弾の生産量は頭打ちになる 『働き方の科学』より抜粋
 さらに、労働時間が週63時間を超えると、疲労によってミスが増え、生産量はむしろ下がってしまうことがわかりました。このため、週56時間労働と週70時間労働とでは、1日あたりの労働時間が2時間以上増えるにもかかわらず、生産量はほとんど変わりません
 この研究は、1週間に1日も休みがないと、生産性が10%下がることも示しています。例えば、同じ週42時間労働であっても、週7日6時間働くよりも、週6日7時間働くほうが、生産性は高いということです。

残業を抑えることが、結果的に生産性を最大化する

 週48時間労働というと、週5日勤務の場合は1日あたりおよそ9時間強。朝9時出社の5時退勤の場合は1日あたりの残業が2時間程度です。生産性を鑑みると、これくらいに残業を抑えるとよいということかもしれません。


*1 Pencavel, J. (2015). The productivity of working hours. The Economic Journal, 125(589), 2052-2076. https://doi.org/10.1111/ecoj.12166