さらに2026年3月、CASIは中国の核弾頭管理体制に関する新たな報告書を公表した。中央管理拠点から各部隊への弾頭輸送、管理責任、緊急時の対応までを分析し、今度は核弾頭の保管、輸送、運用を支える連鎖を可視化した。

 一度の試射に成功することと、部隊、装備、指揮統制、核弾頭管理が長期的に安定して機能することは同じではない。

 2024年の試射は対外的なシグナルにはなったが、組織内部の運用をめぐる疑念まで解消したわけではなかった。

2026年に示されたのは
海上核抑止という「体系」

 今回、海軍が発射したという事実は、JL-3の射程以上に重要である。

 海上核戦力が担う第二撃能力(先に核攻撃を受けても報復できる力)の核心は、最初の攻撃を受けても核戦力を生き残らせる能力と、潜水艦の所在を把握しにくいことが相手に与える不確実性にある。

 しかし、潜水艦とミサイルを保有するだけでは抑止は成立しない。潜在的な相手が、「中国の戦略原潜は命令を受け取り、必要な時に報復できる」と信じる必要がある。

 潜水艦からの発射には、艦艇、海中通信、指揮統制、発射権限の伝達、ミサイル、着弾管制までを、一つの体系として機能させる運用能力が求められる。

 中国の094型戦略原潜は最大12発のSLBMを搭載するとされ、最新のJL-3は推定約1万キロの射程を持つ。これが実戦配備されれば、中国のSSBNが米本土を脅かし得る海域は大きく広がる。

 ただし、外部の専門家が推計する潜在能力と、習近平政権自身が公開の形で示す運用可能な能力は同じではない。

 今回の試射で習近平政権は、外部が推計してきた能力を、自ら発する戦略的シグナルへ変えた。JL-3の最大射程を公式に証明したわけではないが、海上第二撃能力を外部に理解しやすい形で示し、対外的な核抑止の信頼性を高める効果を持った。

3回の試射が映す
習近平政権の焦りと不安

 海上核戦力はロケット軍の代替ではない。中国は以前から、陸上核戦力に海上第二撃能力を加え、核抑止を多重化してきた。