中国の習近平国家主席2026年5月12日、中国・北京の人民大会堂で行われた、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領との署名式に臨む中国の習近平国家主席。 Photo:EPA=JIJI

インドネシア高速鉄道の入札で中国に敗れた――。日本ではいまなお、そんな「敗北論」が語られる。だが、本当に問うべきなのは受注競争の勝敗ではない。東南アジアで日本が長年積み重ねてきたものは、なお大きな存在感を持っている。習近平が巨額を投じても容易には手にできない、日本の強みとは。(北海道大学公共政策大学院研究員 王 彦麟)

インドネシア高速鉄道の敗北
本当に正しい問いを立てているか

 2023年、中国主導で建設されたインドネシアのジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」が開業した。当初の開業予定より約4年遅れ、建設費は当初の55億ドルから73億ドル規模へ膨らんだ。

 中国側との融資条件をめぐる交渉は難航し、最終的にインドネシア政府は、事業主体の国有企業連合への追加財政支援を迫られた。それでも中国側はこれを「一帯一路」の代表的成果として宣伝した。

 この事業をめぐっては当初、日本の新幹線方式が有力視されていた。長年にわたりインドネシアの鉄道整備に関与してきた実績に加え、安全性や運行管理技術への評価も高かったためだ。

 しかし2015年、インドネシア政府は最終的に中国案を採用した。中国側が、政府保証を求めないことや短工期、迅速な資金供与などを打ち出し、強く働きかけたためである。

 新幹線技術を誇る日本がこの国家的プロジェクトの受注競争で敗れたことは、当時の日本国内に大きな衝撃をもたらした。いまなお「中国に負けた」という敗北感が日本の論壇にくすぶっている。

 だが、ここで立ち止まって問い直したい。私たちは、本当に正しい問いを立てているのだろうか。