1980年5月9日、新華社は南太平洋への「運搬ロケット」発射実験を予告し、同月18日に試射は成功した。中国は初めてICBMの全行程飛行を実証し、「核を保有する国」から「核を大陸間まで届けられる国」へ進んだ。
1980年の主題は、能力そのものの存在を世界に証明することにあった。
2024年、ロケット軍は
なぜ44年ぶりに撃ったのか
44年後の2024年、中国は再び太平洋へICBMを発射した。背景には、ロケット軍を取り巻く環境の変化がある。
2022年10月、米空軍の中国航空宇宙研究所(CASI)は、ロケット軍の基地、部隊番号、任務、指揮官などを整理した報告書を公表した。従来は外部から把握しにくかった組織構造が、オープンソース情報によって大幅に可視化されたのである。
この報告書が、習近平政権によるロケット軍の汚職や装備調達をめぐる中国当局の内部調査の直接の契機だったかは確認できない。しかしその後、ロケット軍と装備部門の高官が相次いで失脚した。2023年12月には軍高官9人の全国人民代表大会代表資格が剥奪され、少なくとも5人がロケット軍出身だった。
外部からは組織が急速に可視化され、内部では人事、装備調達、訓練をめぐる問題が露呈した。
こうした中、2024年9月、ロケット軍は陸上発射型ICBMを太平洋へ試射した。核抑止の信頼性を修復することが目的だったと断定はできないが、高官の失脚が続く中でも、ロケット軍が発射任務を完遂できることを外部へ示す効果はあった。
1980年が能力の初証明だったとすれば、2024年は、陸上核戦力がなお運用可能であることの再可視化だった。
一度の成功では
終わらなかった問題
2024年の成功によって、ロケット軍への疑念が解消されたわけではない。
2025年、ロケット軍の調達部門は、審査ミスや入札談合などを理由に、評価専門家74人と供給業者116社を処分した。対象には2016年の案件も含まれ、調査はロケット軍発足直後まで遡る。
これは、問題が一部幹部の不正にとどまらず、装備調達制度にも及んでいた可能性を示す。







