中国の習近平国家主席Photo:Contributor/gettyimages

米国がエヌビディア製AIチップ「H200」の対中輸出を一部認めても、中国ではなおエヌビディア製GPUの争奪と価格高騰が続いている。報道によれば、中国税関は上層部の指示を受け、H200の通関を認めなくなっているという。つまり、米国が輸出を認めても、中国当局自身の措置によってH200の正規輸入が難しくなっているのだ。複数の報道を読み解くと、中国AI戦略の実像が見えてくる。(北海道大学公共政策大学院研究員 王 彦麟)

米国の規制緩和でも
中国でGPU争奪戦が続く理由

 なぜ中国は、輸出規制が緩んでも喜べないのだろうか。

 今年に入り、米国政府は一定の条件の下でエヌビディア製AIチップ「H200」の対中輸出を認める方針へと転じた。ところが、ここ2カ月の間に、その流れだけでは説明のつかない二つの出来事が相次いで報じられた。

 一つは、ブルームバーグが、中国の「国防七子」(工業情報化部の直属で、軍事・国防分野に多大な貢献を持つ7大学の通称)に数えられる北京航空航天大学や西北工業大学が、H200の計算資源(コンピュート)をレンタルしようとしていると報じたこと。

 もう一つは、フィナンシャル・タイムズが、中国のヤミ市場でエヌビディア製GPUの価格が急騰していると伝えたことだ。

 普通に読めば、それぞれ別のニュースである。しかし、輸出規制緩和という文脈に置いてみると、一つの疑問が浮かび上がる。輸出規制が一部緩和されたにもかかわらず、なぜ中国ではなおエヌビディアのGPUを巡る争奪が続いているのか。

「輸出再開」とヤミ市場高騰
なぜ同時に起きたのか

 米国は2026年初め、一定条件を満たす中国企業に対し、H200の輸出を認める方針へ転じた。

 ところが、フィナンシャル・タイムズの取材に応じた複数の中国人チップ商によれば、中国税関は上層部の指示によりH200の通関をむしろ認めなくなっているという。

 その狙いは、H200の輸入解禁が国内AI半導体産業の育成を妨げることを防ぐことにあるとされる。つまりH200輸入の「正規ルート」は、米国ではなく習近平政権自身の手によって狭められているのである。

 この結果、需要はH200以外の高性能GPUへと流れ込んだ。フィナンシャル・タイムズによれば、中国のヤミ市場ではエヌビディア製GPUの価格が軒並み急騰している。

 例えば、最新世代のDGX B300サーバーは半年ほどで約400万元から800万元超へ値上がりし、旧世代のA100サーバーも約20万元台から60万元前後まで高騰した。ゲーミング用GPUを改造してAI用途に転用する動きも報じられている。